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・・・ 女も笑ったくらい、どこまでが本当で、どこまでが嘘か判らぬような身の上ばなしでしたが、しかし、七つの年までざっと数えて六度か七度、預けられた里をまるで附箋つきの葉書みたいに転々と移ってきたことだけはたしかで、放浪のならわしはその時もう幼・・・
織田作之助
「アド・バルーン」
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・・・役所ではこれを附箋と云っている。 木村はゆっくり構えて、絶えずこつこつと為事をしている。その間顔は始終晴々としている。こういう時の木村の心持は一寸説明しにくい。この男は何をするにも子供の遊んでいるような気になってしている。同じ「遊び」に・・・
森鴎外
「あそび」