・・・けれども、エンゲルスの意見でこの問答体の書きかたが変更され「共産党宣言」として「共産主義者の政策をのべる」ことが決定された。第二回のロンドン大会に出席したマルクスは、共産主義者同盟の名によって「共産党宣言」を起草することを頼まれた。一八四八・・・ 宮本百合子 「カール・マルクスとその夫人」
・・・林房雄その他の人々によって、それまでのプロレタリア文学運動の指導方針の政治的偏向ということが一方的に云いたてられ小林多喜二の虐殺によっておじけづいた人々が心理的にそれにどんどんまきこまれて行った。丁度ソヴェト同盟では前年に第一次五ヵ年計画を・・・ 宮本百合子 「解説(『風知草』)」
・・・社会組織の一部は、女性を人として生活させる為に変更されようとしている。 けれども、現代の一般社会には、女性の人としての生活、人としての発展を心から肯定し助力しようとする傾向と並んで、因襲的な過去の亡霊にしがみ付いて、飽までも女性を昔なが・・・ 宮本百合子 「概念と心其もの」
・・・ 会わない、見ない、と云うことが、何も私共が母娘であり、Aと自分とが夫妻であると云う事実に変更を与えるものではない。其那ことをし、故意に生活に強制した一点を作るより、互に理解しようと努力し、友情で団結して行く気に、どうしてなれないのかと・・・ 宮本百合子 「傾く日」
・・・そして一方に、文学に対する経済主義の偏向があらわれた。民主的評論、批評の活動は、あやまった一方的な見かたを正しい関係におき直すために多くのエネルギーを費さなければならなかったが、いわば、そこで息切れした。田中英光の「オリムポスの果実」からは・・・ 宮本百合子 「現代文学の広場」
・・・ プロレタリア文学の領域でも左右両翼への偏向がプロレタリアートによって正当な批判を受けたのであった。 プロレタリア・リアリズムにむかっての具体的な出直しの試みとして、ソヴェトの文学は大胆に生産の場所からの生のままの報告を、領分の中に・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・が自己批判して、工場、クラブ内の文学研究会指導方針を変更したことは前回に書いた。 孤立的な余技的趣味への閉じこもりを排撃しろ。 文学研究会員は大衆的に壁新聞、工場新聞へ動員され、活溌な文学活動を通して、勤労者の世界観と自発性とを高め・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・それは従来のプロレタリア文化・文学運動は、その指導者であった蔵原惟人、小林多喜二、宮本顕治らの政治主義的偏向によって、文化活動から政治活動へ追いこまれ、創造力を枯渇させ云々という筋であった。 その後の十余年間に、文学に心をよせる人々が読・・・ 宮本百合子 「五〇年代の文学とそこにある問題」
・・・プロレタリア文学の分野にあった人々の或る部分は、新たなリアリズムの便宜的註解に拠って、従来のプロレタリア文学運動と対立し、その頃流行った政治的偏向という言葉で批判しはじめたのである。 この時期に林房雄氏が出獄した。プロレタリア文学の仕事・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・そのために、こわい、いやだ、それはまちがっている、という声々を治安維持法に向って発せず、かえって、緊張した顔をわきに向け集めて、社会主義リアリズム論争、文学指導の政治的偏向という主題に熱中した。文学理論は、そのものとしてとりあげられず、すで・・・ 宮本百合子 「作家の経験」
出典:青空文庫