・・・しかし、日本のあらゆる官僚機構と学界のすべての分野に植えこまれている学閥の威力は、帝大法科出身者と日大の法科出身者とを、同じ人生航路に立たせなかった。「息子を世に立たせよう」という自身には封じられていた希望で、田畑を売ってまで「大学を出した・・・ 宮本百合子 「新しいアカデミアを」
・・・東大でも、伊藤ハンニまがいの山師がでているし、きわめてエクセントリックな性格と生活態度の女子学生が大阪の実家で弟に殺されたという事件があったし、法科の学生が教室でエロティックな映画を公開したというおどろくべきこともありました。女子の学校など・・・ 宮本百合子 「新しい抵抗について」
・・・鉄、ニッケル、ジュラルミン等の原鉱を多量に生産することが分ったそのためにイタリーは附近の土民との間に砲火を交えることを敢て辞さない。そして、外国の新聞はこの戦闘行為の性質を解剖して、その背後の勢力を考えるとこの白沙漠に於ける戦闘はスペインの・・・ 宮本百合子 「イタリー芸術に在る一つの問題」
・・・一九三〇年頃からアメリカに於て新しきヒューマニズムの問題に関する最初の烽火がアーヴィング、バビット、ポオル等によってあげられた。フェルナンデスはその運動の影響をも受け、「行動のヒューマニズム」という標語を「言葉のデリケエトなニュアンスの上に・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・相異を理解しながら、読者は次第に北国へ向い、やがて峯子に出会ってA村に入ると、そこには、貧農の息子でのちに急進的に行動する清司、動揺する地方の人道主義的インテリゲンチアである小学教師の木村、窮乏による放火犯の息子であり、A村での農民組合組織・・・ 宮本百合子 「作家への課題」
・・・激しい歴史の動きにさらされながら、世界の良心あるすべての人々は、戦争放火者たちの跳梁に抗して、新しい人類の理性の勝利と美の確立のために奮闘している。わたしたちは、そのような世界と日本の現実の隅々までを見ようとする。新しく湧き出ようとしている・・・ 宮本百合子 「序(『日本の青春』)」
・・・に就いて書いて居られるが、あの中の「即ち十丈の竿のさきにのぼって手足を放って身心を放下する如き覚悟がなくては」という気持、あの「人を救うための求道ではない、真理の為めに真理を究める求道」であるという心境、それを私は求めたいと思います。私の目・・・ 宮本百合子 「女流作家として私は何を求むるか」
・・・ 一九三三年二月二十七日、政権をとって一ヵ月のナチスがゲーリングを先頭にしてドイツ国会放火事件を仕組んだ。放火人ファン・デア・ルッベは共産党員と自白し、後生大事に党員証を身体につけていた。しかし裁判で、ルッベがナチスのまわしものとしての・・・ 宮本百合子 「「推理小説」」
・・・ ――○―― 国男、山田さん位の青年の恋に対する心持、恋のしかた、と、娘のそれとの組み合わせ。 ――○―― 放火犯の心持、 寥しさに火をいじることから始り、心の寥しさが増すにつれて、大・・・ 宮本百合子 「一九二三年夏」
・・・そして後、新たなる魂をもって邦家のために生き抜こうと決心しています。未だに過去の労働運動をもって喋々するものがあるならば、それらは徒に事を構えて能事終れりとなす階級であって、かようなことはいわゆる革命家に任せておけばよいと考える。今や己の愚・・・ 宮本百合子 「それに偽りがないならば」
出典:青空文庫