・・・ 逝去の報知を手にした時、自分の心に衝上って来た、驚き竦え、考えに沈んだ心持は、恐らく、これ等の見えない原因を背後に持った私自身へのアラームであったのだと思われます。あれ程健康そうに見え、自分の良人に比して、大した年長でも在られない博士・・・ 宮本百合子 「偶感一語」
・・・プロレタリア・農民婦人の文化水準は敵のブルジョア・地主的反動文化の重しで、低く圧せられたままに放置されているのを見る。而もわれわれが猛烈に、決然と、婦人大衆を低く繋ぐ反動文化と戦闘を開始しないことは、とりもなおさず日本におけるプロレタリア文・・・ 宮本百合子 「国際無産婦人デーに際して」
・・・ 十一月二十五日 十二月三日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 駒込林町より〕 十二月三日 今日は珍らしい報知を致します。泰子が昨夜の十二時から今日の昼までたっぷり十二時間眠ってうち中をアッと言わせました、何年にもないことです。・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・作家が自身の作品に深々と腰をおろしている姿には殆ど接し得ないという、「作品と作家の間の不幸な関係は、そのままで放置すれば、作品と作家がすっかり離縁して、てんでに何処へ漂流するかも知れないのだ。小説の前途について、いろいろ不安の説を聞くが、私・・・ 宮本百合子 「作家に語りかける言葉」
・・・ しかし、農村におけるこんな反革命分子の跋扈および無智は放置すべきだろうか? タワーリシチ! 農村は右傾派がそれを理解したように都会によって搾取さるべき植民地ではない。都会の工業生産と断然結合すべき、社会主義的生産に欠くべからざる工業原料生・・・ 宮本百合子 「三月八日は女の日だ」
・・・ 間もなく、去る一月六日から四日間、『報知新聞』の学芸欄に「ジイドの笑いと涙」という題で、『プラウダ』が社説として発表したジイドのソヴェト旅行記批判が、山村房次氏によって訳載された。 その文章は何月何日の『プラウダ』に出たものであっ・・・ 宮本百合子 「ジイドとそのソヴェト旅行記」
・・・ 新聞 新聞は今、『時事』と『日日』と『報知』と、それに芝居のことを知りたいために『都』と、都合四つとっております。それらの紙面で先ず目をつけるのは社会欄です。社会記事から創作の材料を得たことは一度もありません・・・ 宮本百合子 「身辺打明けの記」
・・・悲しい事に、今日東京に住む私共は、全然野生に放置された自然か、或は厭味にこねくられた庭か、而も前者はごく稀れにしか見られないと云う不運にあるのだ。 ジョージ・ギッシングは、非常に困難な一生を送り、芸術家としても決して華やかな生涯は経・・・ 宮本百合子 「素朴な庭」
・・・ 国男自動車で藤沢を通り倉知一族と帰京、基ちゃん報知に来てくれる。自分雨をおかし、夜、二人で、林町に行きよろこぶ。 自転車に日比谷でぶつかり、足袋裸足となる。 十一日 大学のかえりA林町により、歩き青山に戻る。石井に五十・・・ 宮本百合子 「大正十二年九月一日よりの東京・横浜間大震火災についての記録」
・・・と呼ばれる昔の離宮のある公園町の下宿に暮していて、その報知の電報をうけとった。 あとからその前後の模様を書いた手紙が来たが、それは父が書いた手紙であった。丁度そのころの日本の若い精神がその青春の嵐とともに直面していた歴史的な波瀾だの、そ・・・ 宮本百合子 「父の手紙」
出典:青空文庫