・・・という大したネウチもない作品を思い出すのは、今こそ自分は少しはホントにプロレタリア、農民の役に立つものとなったという喜びのためだ。 今こそ、武器は一本のペンであろうとも、自分はそれをもって守るべき味方と正義と、闘うべき敵を、階級として実・・・ 宮本百合子 「「処女作」より前の処女作」
・・・ 五ヵ年計画は、体のいい軍備拡張だとブル新聞は云うが、ソヴェト同盟がホントに勤労大衆の日常の幸福のためにやっていることは、これ一事だって明らかではないか。 あがる賃銀 同じ五ヵ年計画のおかげで、ソヴェト同盟・・・ 宮本百合子 「ソヴェト労働者の解放された生活」
・・・「先ず本当だと云う詞からして考えて掛からなくてはならないね。裁判所で証拠立てをして拵えた判決文を事実だと云って、それを本当だとするのが、普通の意味の本当だろう。ところが、そう云う意味の事実と云うものは存在しない。事実だと云っても、人間の写象・・・ 森鴎外 「かのように」
・・・初めは本当の事のように活溌な調子で話すがよい。末の方になったら段々小声にならなくてはいけない。 一 町なかの公園に道化方の出て勤める小屋があって、そこに妙な男がいた。名をツァウォツキイと云った。ツァウォツキイはえらい・・・ 著:モルナールフェレンツ 訳:森鴎外 「破落戸の昇天」
・・・それによって自分の運命に対する信頼の念はいささかも減じないが、本当の自分というものがこれまで考えていた自分のようなものでないことは確かになった。これまでの自分は真実の自己の殻であり表面である。真実の自己は全然顧みられていなかった。真実の自己・・・ 和辻哲郎 「自己の肯定と否定と」
出典:青空文庫