・・・婦人が失業したら母性の痛められ方が男性よりひどい。男は土方をしても労働できるけれども、女の人は売笑婦になる。そういう道徳的頽廃を起すから女の失業者の問題を解決しなければならないけれども、社会的解決は資本主義的民主主義ではできません。だからあ・・・ 宮本百合子 「幸福の建設」
・・・ しかも、日本の軍事的権力によって特別な保護をうけていた企業家たちは、生産の大半を婦人の労力によって行いながら、勤労婦人の福祉施設、母性保護設備、災害予防施設は行わずにきたのです。 今日、日本の組織労働者は四百万人あります。その半数・・・ 宮本百合子 「国際民婦連へのメッセージ」
・・・ブルジョア社会制度の下のプロレタリアート数千万の女性にとって、母性は彼女らにより生き易き権利を与えるどころか、明白に日々の労苦の門だ。生存そのものをさえおびやかしている。 ターニャを見ろ! 日本女は自分の中に眠っている母性がそのため・・・ 宮本百合子 「子供・子供・子供のモスクワ」
・・・人間の生みてである女の奥にひそむ母性の感情の深い根はそこにある。現実は、しかし、望むと望まないにかかわらず、ある時の義務としてその生命を捨てることを必要とする。一つの人間の命の最大能力を発揮する必要が、ある場合の結果として一人の人間を何の華・・・ 宮本百合子 「祭日ならざる日々」
・・・同一な技術に対して同一な報酬が婦人に与えられるだけでは十分でなく、婦人の母性がそれにつれて切りはなせない条件として考えられ、それに対する社会的な施設がなされなくては、健全な社会勤労は在り得ないことを学んで来ているのである。社会のために勤労の・・・ 宮本百合子 「女性の現実」
・・・ 社会主義社会で、つまり男女同一労働に対して同一賃銀を実施し、しかも現実的な母性保護が完全に行われるところでこそ、男女共学が本ものとして行われるのは自明なことだ。 われわれが男女共学についていうときは、必ずその基礎となるプロレタリア・・・ 宮本百合子 「砂遊場からの同志」
・・・愛の展開も従って本能的に行われて、女の母性的な愛の本質は非常に豊かに潤沢なものである筈なのに、女の歴史のくりひろげられる場面がそれぞれの家庭という墻の内に限られていたとおり、愛の作用まで無意識の狭さを与えられた。女は愛情ふかいものとされなが・・・ 宮本百合子 「世代の価値」
・・・夫婦愛より歴史性の古いと云われているその母性感情の故に、最も高度に錯綜した社会諸関係の辛苦にふれているという深刻な事実の裡にこそ、このバッハオーフェンの一巻が古典として存続し得る必然がかくされているというのは、意味深いことであると思う。・・・ 宮本百合子 「先駆的な古典として」
・・・こういう風に循環して健康状態を改良して行こうという努力は非常なもので、母性保護研究所なんかへ行って見ると非常によく設備してある。 それから例えば子供を生む時は産院へ無料で入れる。産院を出ると、お母さんと子供の住んでいる区の健康相談所があ・・・ 宮本百合子 「ソヴェト・ロシアの素顔」
・・・し、母性福祉を約束していることは当然といいながら、その現実的な価値ははかりしれません。なぜなら、新しい中国の人民社会において、憲章の条文は実現されるものだからです。日本の政権が、こんにち言論を抑圧し、正義をまげて労働者階級を弾圧し、民主的発・・・ 宮本百合子 「宋慶齢への手紙」
出典:青空文庫