・・・これ等は、おもに流動する貨幣のみちびきかた、適当な配分を考究して、金によって支配される、生活に必須な物質方面から、人間生活を正当なものに落ち付けて行こうとするのではないでしょうか。けれども、私が、深く疑問に思うことは、それ等の諸問題が学理的・・・ 宮本百合子 「男…は疲れている」
・・・情熱は女を生かし、みちびき、何物かを創造する力となるけれど、一方またそれを抑え、制御し、率いるだけの意志とか理性とかいうものは殊に女にとっては必要ではないかしら、情熱のために生活全体の破滅を来たすとはおそろしい事ね。 そうね、こうして自・・・ 宮本百合子 「久野さんの死」
・・・ 出版不況は、戦後の浮草的出版業を淘汰したと同時に、同人雑誌の活溌化をみちびき出している。「先輩たちが同人雑誌を守って十年十五年と修業したのち、やっと文壇に出られた」そのような「同人雑誌本来の面目にかえる日が来たことを」火野葦平はよろこ・・・ 宮本百合子 「しかし昔にはかえらない」
・・・人々が何年間かそれでもってやしなわれてきた鬼のような方法で所有者から物を引きはなし、日本の法律がそれを肯定している所有の権利を抹殺してしまおうということは、非人間的なもののかんがえ方、生き方の習慣からみちびき出されるかもしれない。 大局・・・ 宮本百合子 「戦争でこわされた人間性」
・・・一九三〇年以来赤をやっつけることは一般の事になっているが、それはほんの一部のものにすぎないようだけれど、進歩的な分子をオミットすることであの戦争だってみちびき出されて来た。だから赤でも黒でもない普通の広い幅の中に、我々は進歩性を強く護ってい・・・ 宮本百合子 「東宝争議について」
・・・しかしその感銘は、ばらばらであったり、不確かであったり、個人的であったりする場合、そこへ民主的文学のみちびきがのびてきて、読者の千差万別の日々に読みとられた文学的感銘を、一本の民主的方向に貫ぬいて整理することを知らせる。指導は、そういうもの・・・ 宮本百合子 「討論に即しての感想」
・・・神仏のお導きで、よい人にさえ出逢ったら、筑紫へお下りになったお父うさまのお身の上も知れよう。佐渡へお母あさまのお迎えに往くことも出来よう。籠や鎌は棄てておいて、かれいけだけ持って往くのだよ」 厨子王は黙って聞いていたが、涙が頬を伝って流・・・ 森鴎外 「山椒大夫」
出典:青空文庫