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・・・私は、もそもそ、けものみたいに立ち上り着物を着ました。着物は、ありがたいものだと、つくづく思いました。どんなおそろしい胴体でも、こうして、ちゃんと隠してしまえるのですものね。元気を出して、物干場へあがってお日様を険しく見つめ、思わず、深い溜・・・
太宰治
「皮膚と心」
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・・・大学士はマッチをすって火をたき、それからビスケットを出しもそもそ喰べたり手帳に何か書きつけたりしばらくの間していたがおしまいに火をどんどん燃してごろりと藁にねころんだ。夜中になって大学士は「うう寒い」と云・・・
宮沢賢治
「楢ノ木大学士の野宿」