・・・旗は、よろこびと幸福とへ向って生活の軌道を切りかえる親切と勇気にみちた信号合図の旗として、かざされ、振られなければならない。嬉々とした人生の建設のために構図し、労作する、その高き旗じるしとして、婦人の大集団の上に、勇敢に、はためかなければな・・・ 宮本百合子 「合図の旗」
・・・物は人を動かすが、人が又物をいかに強力にうごかすかという人類の能動力その相互関係において有機的に芸術を見、且つ生もうとする段階に到達しているのである。徳永氏が傑れたものとしてあげている『中央公論』六月号のスペイン戦線からの作家たちのルポルタ・・・ 宮本百合子 「明日の言葉」
・・・地球上に在るおのおのの集団――国――が、現在どんな有機的関係を持っているか、又、どう云う運命の下に、日夜、同じ太陽を廻っているか。それ等を、わが胸で痛感する者は、決して未だ多過ぎることは無いのである。 近頃、漸々一体の注意を呼び始めた、・・・ 宮本百合子 「アワァビット」
・・・恋愛とか友情とかは、人間感情がたかまった形として、とかくそれだけ切りはなした言葉で問題とされ勝ちだけれども、日々の生活のなかでは、めいめいの生活態度全体とまったく有機的につながり合っているもので、友情を語ることは、人生への態度を語るという意・・・ 宮本百合子 「異性の間の友情」
・・・ポッツリ切りはなされている亀のチャーリーという男が、ニューヨークには、ほかの日本人労働者も学生も商人もいるであろうのに、それらとはちっともかかわりなく、またアメリカの労働者、その前衛とも何の有機的結合をも示さず、ひたすらアメリカの子供に向っ・・・ 宮本百合子 「一連の非プロレタリア的作品」
あるがままの姿は決して心理でもなければ諷刺でもない 伊藤整氏の近著『街と村』という小説集は、おなじ街や村と云っても、作者にとってはただの街や村の姿ではなく、それぞれに幽鬼の街、幽鬼の村である。これまでの自身の中・・・ 宮本百合子 「観念性と抒情性」
・・・大岡昇平、火野、林などの作家にふれた前半と後半とはばらばらで、きょうの日本とその人民が歴史的におかれている大きい背景をもって諸作品が有機的に評価されるためには何かが足りなかった。 創作の方法は、世界観から規定されると云われたのは一九三〇・・・ 宮本百合子 「現代文学の広場」
・・・それは、ソヴェトで労働大衆とプロレタリア作家とがどんなに有機的に手を結び、社会主義社会の建設のために共同作業をやろうとしているか。労働大衆が、自分たちの文学としてのプロレタリア文学発展に対して、どんな積極的態度を示して来ているかということに・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・大まかに、社会と人間の有機的な諸関係をその歴史の積極な方向――社会主義の展望において描き出す、という規定を土台としているだけである。プロレタリア文学の時代、その最後の段階で、「前衛の目をもって描け」と云われたことは、社会主義リアリズムへ展開・・・ 宮本百合子 「心に疼く欲求がある」
・・・この間、大衆の健全な娯楽、階級的な文化の一般的啓蒙、あらゆる角度と種類からの労働者階級の文学、民主主義文学の創造と普及とは、必ずしもそれぞれの特殊性を有機的にいかすくみ合わせで組立てられてもいなかったし、動かされてもいなかった。 一九四・・・ 宮本百合子 「五〇年代の文学とそこにある問題」
出典:青空文庫