・・・もっと有機的に、苦痛、困難、失敗の繰返しのうちから根気よく勝ちとった革命が描かれなければならないんです。第一、そんな赤白物語、つまりませんよ、読んだって! 彼女は快活に笑った。階段を二階へのぼりながら、彼女は日本の児童のための雑誌、本の・・・ 宮本百合子 「子供・子供・子供のモスクワ」
・・・ 多くの作家によって今日大衆は自身の文学を作る可能を持った者としてその面での有機的関係で見られておらず、或る意味ではプロレタリア文学の運動が起らなかった以前のままの内容で作家は大衆を取上げているのである。このことはどうして起って来たので・・・ 宮本百合子 「今日の文学の鳥瞰図」
・・・の、どちらかというと自然発生的な構成の方法はA村をつよく作者が手もとによせて引つかむには不便な方法であり、また逆に作者によるA村のつかみかたが、この構成の方法に反映しているとも見られる微妙な有機的関係にあるのである。 作者は、細かく農民・・・ 宮本百合子 「作家への課題」
八月七日の本紙に、伊藤整氏が同氏の作「幽鬼の町」に就て書いた私の月評に反駁した文章を発表された。編輯者は、私からそれに答える文を求めている。生活及文学に対する私の態度を盲目的な偏執又は非芸術的な機械性と云われている点や錯覚・・・ 宮本百合子 「数言の補足」
・・・ この二つの論文及び批評家伊藤整氏によって書かれた小説「幽鬼の町」を読んで、今日文壇で批評家として通っている諸氏の精神的性格に、芸術家として第一歩的な自己省察の健康な弾力が喪失していることを痛感したのは、恐らく私一人ではなかろうと思う。・・・ 宮本百合子 「文芸時評」
・・・しかし戸を打ち破って踏み込むだけの勇気もなかった。手のものどもはただ風に木の葉のざわつくようにささやきかわしている。 このとき大声で叫ぶものがあった。「その逃げたというのは十二三の小わっぱじゃろう。それならわしが知っておる」 三郎は・・・ 森鴎外 「山椒大夫」
・・・努力のための勇気と快活とを奮い起こせばいいのです。現在の小ささを悟れば悟るほど努力の熱は高まって来ます。自分の運命を信じて、今に見ろ今に見ろと言いながら努力する事は、自分に対していいのみならず、自分の愛する人々を力づけ幸福にする意味で、他人・・・ 和辻哲郎 「ある思想家の手紙」
・・・それは西洋画家が普通の事としてやっている対象全体への有機的な注意の欠如である。 おそらくこの画は全体の構図と個々の麦の忠実な写生とからできたものであろう。従ってあの数多い麦は、かなり機械的な繰り返しをもって、ただ画面上の注意のみによって・・・ 和辻哲郎 「院展日本画所感」
・・・しかし人間が超個人的な永遠な事業を完成するためには、できるだけ有機的に個々の力を共同させねばならぬ。その組織が完全になればなるほど人生の目的は力強くつかまれる。――この事情は勢い民衆の間の心と心との交通を力づけるだろう。 そこでキリスト・・・ 和辻哲郎 「世界の変革と芸術」
・・・従って有機的な動き方を機械的な動き方に変質せしめたものと見ることができる。この表現の仕方は明白に自然的な生の否定の上に立っている。そうしてそれが一切の動作の最も基礎的なものなのである。が、このように自然的な動きを殺すことが、かえって人間の自・・・ 和辻哲郎 「能面の様式」
出典:青空文庫