・・・一 嫉妬の心努ゆめゆめ発すべからず。男婬乱なれば諫べし。怒怨べからず。妬甚しければ其気色言葉も恐敷冷して、却て夫に疏れ見限らるゝ物なり。若し夫不義過あらば我色を和らげ声を雅にして諫べし。諫を聴ずして怒らば先づ暫く止めて、後に夫の・・・ 福沢諭吉 「女大学評論」
・・・いわんや己れの欲せざる所を他の一方に施すにおいてをや。ゆめゆめあるまじき事にして、徹頭徹尾、恕の一義を忘れず、形体こそ二個に分かれたれども、その実は一身同体と心得て、始めて夫婦の人倫を全うするを得べし。故に夫婦家に居るは人間の幸福快楽なりと・・・ 福沢諭吉 「日本男子論」
・・・かかる大切の場合に臨んでは兵禍は恐るるに足らず、天下後世国を立てて外に交わらんとする者は、努ゆめゆめ吾維新の挙動を学んで権道に就くべからず、俗にいう武士の風上にも置かれぬとはすなわち吾一身の事なり、後世子孫これを再演するなかれとの意を示して・・・ 福沢諭吉 「瘠我慢の説」
出典:青空文庫