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・・・臣子の分として、九原の下、板倉家累代の父祖に見ゆべき顔は、どこにもない。 こう思った林右衛門は、私に一族の中を物色した。すると幸い、当時若年寄を勤めている板倉佐渡守には、部屋住の子息が三人ある。その子息の一人を跡目にして、養子願さえすれ・・・
芥川竜之介
「忠義」
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・・・余らの俳句を学ぶや類題集中蕪村の句の散在せるを見てややその非凡なるを認めこれを尊敬すること深し。ある時小集の席上にて鳴雪氏いう、蕪村集を得来たりし者には賞を与えんと。これもと一場の戯言なりとはいえども、この戯言はこれを欲するの念切なるより出・・・
正岡子規
「俳人蕪村」