・・・従ってその連鎖のつながり方を規定するものは作者各自の個性のアンサンブルである。ところがそういう集団の組織は時と場合により多種多様であるから、もしそこになんらか外側から人工的に加えられた制限がないとしたら、その結果はどこへどうそれて行くか見き・・・ 寺田寅彦 「連句雑俎」
・・・『新潮』は新年号に十五枚ぐらいの小説を十五人ぐらいにかかせているが、批評によると、短篇アンサンブルとしての効果なし。稲ちゃんも大変スタイルに留意して試みている。矢田津世子が書き、たい子がかいている。俊子さんの第三部は『改造』二月に出るでしょ・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・が笑いと、当時の大衆的な感覚――迷信その他――でシェイクスピヤの作品の中でもきわめて娯楽性が高いが、音楽、舞踊のアンサンブルは、また喜劇的要素としての職人の素人芝居をあすこに入れたことは、あの劇も単なるおとぎ話、娯楽劇としてしまわなかった要・・・ 宮本百合子 「質問へのお答え」
・・・つれの女の子、チェックのアンサンブル黒いハンドバッグと手袋とをその男がもってやっている。このよた、ちっとも笑顔をせず。「あっちへつけときましたから」「おつけになって下さいましたの?」「ええ」〔欄外に〕バアの女給。・・・ 宮本百合子 「情景(秋)」
出典:青空文庫