・・・ そもそも、インフレーションの原因は厖大極まる軍事費のおかげである。当時の代議士たちは、議会の白い建物の中で、一人のこらず夢のように巨額な軍事予算に賛成の手をあげて来たのであった。 国民経済は全くうちこわされ、各家庭の経済は、ひどい・・・ 宮本百合子 「現実の必要」
・・・文化現象としてよりもインフレーション現象としての出版問題の解決はむずかしく複雑であろう。石橋湛山は、編輯者としてインフレーション問題を扱えば、まさか聖書の文句を引用して幼児の如くあらずんば天国に入るを得ず、とあるから国民よ、幼児のごとく政府・・・ 宮本百合子 「豪華版」
・・・ 例えば、インフレーションというようなものは、戦争のお蔭で起った結果であります。軍事予算というものを、無法にどんどん出しましたから、それで、お金の値打ちが下って、物と金の釣合いがとれなくなって、物価は二十五倍に騰った。物価が騰ったから月・・・ 宮本百合子 「幸福について」
・・・しかし、現在の日本の全人民生活を危機に陥れているインフレーションは、これらの名目上の婦人解放の実現を、非常に困難にしています。一日一日と騰貴する物価に、決して追いつくことのない待遇改善の実情は、妻であり母である女性の辛苦を言語に絶した状態に・・・ 宮本百合子 「国際民婦連へのメッセージ」
・・・という小説は、インフレーション時代のベルリンと日本の震災時分を背景として動揺する中層の精神を描いて印象深くありました。スタンダールは読む人の成長につれて読み返される価値があり、作家とすれば、そのことがすでに一つの大きい価値ですね、私も読み返・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・そして、この期間は同時に、戦時中最悪の労働条件に虐使されて来た勤労男女が、基本的な人権と労働の権利にたって、インフレーションとたたかいながら、日本の労働条件を半植民地の低さから解放しようと奮闘した。外にあらわれた形では大小のストライキ続きだ・・・ 宮本百合子 「五〇年代の文学とそこにある問題」
・・・ 第一、その一年のうちに物価が安定するどころか、きわめて急速に鰻のぼりの線を辿りはじめました。インフレーション防止のためにいろいろの対策が行われましたが、物価があがるのを防ぐことはできませんでした。いくら働いても給料は物価においつかなく・・・ 宮本百合子 「今年こそは」
・・・日本の忍耐づよいいく百万の女性たちはこの点をよくよく思いかえしてみなければならないと思います。インフレーションの悪化は防ぎようもなくて、先日のラジオで石橋蔵相が何といったでしょう。彼は聖書の文句を引用しました。「幼な児の如くならざれば天国に・・・ 宮本百合子 「今度の選挙と婦人」
・・・ほとんど倍額に近いこの予算総額は、最近における日本のインフレーションのすくいがたい悪化を物語っており、同時に一般人民の極度な経済的困窮を示している。あらゆる形で大衆課税がとりたてられ、たとえ所得税の税率がいくらか引き下げられたとしても、汽車・・・ 宮本百合子 「今日の日本の文化問題」
・・・ 石橋湛山氏が大蔵大臣として、インフレーションの、恐しいこの時期に、ラジオ放送して、幼な児の如くならずんば天国に入るを得ず、というようなことをいったのは純潔と反対のことであった。大臣という立場は、全人民経済生活の具体的解決を責任としてい・・・ 宮本百合子 「社会生活の純潔性」
出典:青空文庫