・・・「Bien……trs mauvais……pourquoi ?……」「Pourquoi ?……le diable est mort !……」「Oui, oui……d'enfer……」 僕は銀貨を一枚投げ出し、この地下室の外への・・・ 芥川竜之介 「歯車」
・・・「Oui, oui……d'enfer……」 僕は銀貨を一枚投げ出し、この地下室の外へのがれることにした。夜風の吹き渡る往来は多少胃の痛みの薄らいだ僕の神経を丈夫にした。僕はラスコルニコフを思い出し、何ごとも懺悔したい欲望を感じた。が・・・ 芥川竜之介 「歯車」
・・・「外国人」である。しかし、電車の中で向こう側にすわった彼と彼女の対話を、ちょうどフランス発声映画に対すると同じ態度で見つつかつ聞き、そうして彼らの「ノン」「ウイ」だけを明瞭に了解するのである。ただし電車の二人連れについては、われわれは「その・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」
・・・ ああウイウイと話しながら往ったり来たりしている。 このごろは、体じゅう引き潮加減ながら調和した感じなのだが、まだ時々、肉体の内にのこっている衝撃のようなものが甦って来る。ああ苦しかったなあ、と思う。それにつれて、目の前の宙で何か透き徹・・・ 宮本百合子 「寒の梅」
・・・「Oui, beaucoup, Monsieur !」と答えると同時に、久保田はこれから生涯勉強しようと、神明に誓ったような心持がしたのである。 久保田は花子を紹介した。ロダンは花子の小さい、締まった体を、無恰好に結った高島田の巓か・・・ 森鴎外 「花子」
出典:青空文庫