・・・イサク・ラクエデムと云っている。その上、職業もやはり、記録によってちがう。イエルサレムにあるサンヘドリムの門番だったと云うものもあれば、いやピラトの下役だったと云うものもある。中にはまた、靴屋だと云っているものもあった。が、呪を負うようにな・・・ 芥川竜之介 「さまよえる猶太人」
・・・が、ソロモンの使者の駱駝はエルサレムを囲んだ丘陵や沙漠を一度もシバの国へ向ったことはなかった。 ソロモンはきょうも宮殿の奥にたった一人坐っていた。ソロモンの心は寂しかった。モアブ人、アンモニ人、エドミ人、シドン人、ヘテ人等の妃たちも彼の・・・ 芥川竜之介 「三つのなぜ」
・・・千二百十二年の三月十八日、救世主のエルサレム入城を記念する棕櫚の安息日の朝の事。 数多い見知り越しの男たちの中で如何いう訳か三人だけがつぎつぎにクララの夢に現れた。その一人はやはりアッシジの貴族で、クララの家からは西北に当る、ヴィヤ・サ・・・ 有島武郎 「クララの出家」
・・・天国への招待。十四章十五節―二十四節。天国実現の状況。十七章二十節―三十七節。財貨委託の比喩。十九章十一節―二十七節。復活者の状態。二十章三十四節―三十八節。エルサレムと世界の最後。終末に関する大説教である、二十一章七節・・・ 内村鑑三 「聖書の読方」
・・・そのあくる日、私たちは愈愈あこがれのエルサレムに向い、出発いたしました。大群集、老いも若きも、あの人のあとにつき従い、やがて、エルサレムの宮が間近になったころ、あの人は、一匹の老いぼれた驢馬を道ばたで見つけて、微笑してそれに打ち乗り、これこ・・・ 太宰治 「駈込み訴え」
・・・怒った時には、縄切を振りまわしてエルサレムの宮の商人たちを打擲したほどの人である。決して、色白の、やさ男ではない。やさ男どころか、或る神学者の説に依ると、筋骨たくましく堂々たる偉丈夫だったそうではないか。虫も殺さぬ大慈大悲のお釈迦さまだって・・・ 太宰治 「花吹雪」
出典:青空文庫