・・・金雀枝の茂みのかげから美々しく着飾ったコサック騎兵が今にも飛び出して来そうな気さえして、かれも心の中では、年甲斐もなく、小桜縅の鎧に身をかためている様なつもりになって、一歩一歩自信ありげに歩いてみるのだが、春の薄日を受けて路上に落ちているお・・・ 太宰治 「花燭」
・・・トルストイのコサックや傑出した短篇「ハジ・ムラート」を読むだけでいい、帝政時代の権力は、自分たちをこやすために搾取するための植民地、属国、だましやすい辺土の住民としてだけ彼等を思い出した。 コーカサスの雄大極まりない山嶽を南へ縫ってウラ・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェト同盟の文化的飛躍」
・・・ 同時に、若いコムソモール等が、職業的な作家としてではなく党員として麦穀買つけの実際に二年間も働いたときの経験を記録した「コサック村」などが出版紹介され、好評を博した。 五ヵ年計画によって、生産労働者の自発性がたかまって来るにつ・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・ 段々トルストイの小説をよむようになり、「コサック」や「ハジ・ムラート」に感動した。深いその感動は、自分のうけている村の自然と人間の生活の姿を強烈にわたしの心に甦らし、それを描き出したいこころもちにみたした。そこで、書き出したのがこの小・・・ 宮本百合子 「作者の言葉(『貧しき人々の群』)」
・・・は日本訳もあって、多くの人々に愛読された作品であるが、その横溢的用語、色彩のつよい表現、強くて大きいリズム、叙事詩的形式などは、いかにも彼が南露のコサック生れであることを物語っている。同じ時代に発表されたロシア作家の作品でも、「赤色親衛隊」・・・ 宮本百合子 「自然描写における社会性について」
・・・「幼年時代」「地主の朝」「コサック」「少年時代」「セバストーポリ」「三つの死」「結婚の幸福」の作者であったトルストイは、三年の間心に思いつづけて求婚する決心のつかなかったソフィヤと遂に結婚した。ソフィヤはその時十八歳であった。二年前、兄の死・・・ 宮本百合子 「ジャンの物語」
・・・二十五日の夜、徹宵この敷石道の上をオートバイが疾走し篝火がたかれ、正面階段の柱の間には装弾した機関銃が赤きコサック兵に守られて砲口を拱門へ向けていた。軍事革命委員会の本部だったのである。 今スモーリヌイには、レーニングラード・ソヴェト中・・・ 宮本百合子 「スモーリヌイに翻る赤旗」
・・・「コサック」や「アンナ・カレニナ」など、今日思出しても新鮮な熱情をもってよんだのであったが、ここに一つ実におかしいことがある。私の公的処女作というべきその「貧しき人々の群」の中には、ところどころで作者がやみ難い人道主義的感激を「子供等よ!」・・・ 宮本百合子 「行方不明の処女作」
出典:青空文庫