・・・机の上にコスモスの花があって非常に初秋めいた美しさです。スエ子の注射のための看護婦のひとが、私がよく仕事をするからと御褒美によく花をいけかえてくれるのです。あなたのところの蘭はまだ活々として居りましょうか。白藤の花は三房あります。ではまた。・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・で「自然はコスモスであることを失ってはいない」と言った人は、それでも、色々殊勝な心がけがあるらしいことよ。文学は文学であることを忘られない作家の一人であるらしくみえます。ユーゴーその他の作品はずっと昔に読んだけれど、今読めばまた今の判断があ・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・、高橋春子さんの「コスモスの花にゆれる秋」、矢倉ふき代さんの「夫は星をほしがらなかった」の三つの文章にあふれている苦痛と、理性、勇気などは、その人々にそうと自覚されている程度は浅いにしろ、何と、この世界の女性の動きに通じたものだろう。 ・・・ 宮本百合子 「「未亡人の手記」選後評」
・・・ ポチが潜るのも面倒がる程、土用の間に裏の夏草は高くなった。コスモスの葉も見える。あの根方の茂みには蛇も昼寝するであろう。 蓬々とした青草の面に、乾いた、何処やら白いような光線が反射し始めた。七月に吹いていたのとは違った風回りで、風・・・ 宮本百合子 「蓮花図」
出典:青空文庫