・・・涼葉にしたところが何もいつまでもこの、私がかりに texture complex とでも名づけるものばかりの周囲をぐるぐる回ってばかりいたわけではないであろう。 以上のような方法を芭蕉や蕪村に及ぼして分析と統計とを試みてみたらあるいはお・・・ 寺田寅彦 「連句雑俎」
・・・ 四 新心理主義の方法は、現代社会のコンプレックスを超現実の手法をもかりてコンプレックスなりに再現しようとしたのではなかったろうか。 文学にあっては、あることが表現しにくい、と表現するにさえ、つまりは表・・・ 宮本百合子 「心に疼く欲求がある」
・・・否定のコンプレックスである。私小説の否定論そのものの本質、展望が、現在のところではまだ歴史性に立って確信的に把握されていないからであろうと思われる。 同じことが、同じ原因で三好十郎の「小豚派作家論」にあらわれていると思う。彼独特の発・・・ 宮本百合子 「五〇年代の文学とそこにある問題」
・・・ この微妙な日本知性のコンプレックスの特色は、さそりの知恵をもつファシストによって今日ふたたび実に巧妙に測定されつつある。心理学的に、統計的に、社会的世論をつくりあげてゆくための暗示の可能性とその方向の指針として。さもなければ、今日の日・・・ 宮本百合子 「世紀の「分別」」
・・・ 平野氏は、この数年来、民主主義文学を語るとき、小林多喜二を語るとき、党について語るとき、一種の圧迫的なコンプレックスから身をほごしかねている。情報局につとめていたことは、まのあたり平野氏に、天皇制と軍国主義の至上命令の兇猛さを示しつづ・・・ 宮本百合子 「孫悟空の雲」
・・・しかも、それは、どこまでも心理として、雰囲気としてもたれていて、その社会的コンプレックスに科学的な分析を加えられることさえも民主主義そのものへの懐疑とひっくるめて、肯おうとしないがんこな、いこじな心理があるように思える。これは、どういうわけ・・・ 宮本百合子 「誰のために」
・・・ 治安維持法的コンプレックスは退治してしまわなければだめです。実はそのコンプレックスで感情を刺戟されるのに、そのことにはふれず、何か外部からの強権を反撥しでもするようなすねかたをすることは、止めるべきだと思います。 民主主義文学の最・・・ 宮本百合子 「討論に即しての感想」
出典:青空文庫