・・・かえって、下手な活弁を労したり、不つりあいな日本文字のサイドタイトルなどをつけられるよりも、ただそのままにわからぬ言葉を聞くほうがはるかにパリの真実、日本人の見たパリの真実がよくわかるのではないか。それがわかるようにするところに作者の人知れ・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(2[#「2」はローマ数字、1-13-22])」
・・・ この叢書の表紙の裏を見ると“Everyman, I will go with thee and be thy guide in thy most need to go by thy side.”という文句がしるされてある。この言葉は今・・・ 寺田寅彦 「丸善と三越」
・・・ よりも、第三金時丸に最も大切なことは、そのサイドを修理することではなかったか。錨を巻き上げる時、彼女の梅毒にかかった鼻は、いつでも穴があくではないか。その穴には、亜鉛化軟膏に似たセメントが填められる。 だが、未だ重要なることはなかった・・・ 葉山嘉樹 「労働者の居ない船」
・・・“Is there any room at your head, Willie?Or any room at your feet?Or any room at your side, Willie,Wherein that・・・ 正岡子規 「死後」
・・・ 二十六日 夜電話にて話す 二十七日 帰紐、夜逢って、リバーサイドを歩く。 二十八日 此日Aは始めてセミナーから Avery に来る。此頃自分はアベレーホールでイジプトの研究をして居たのだ。 三十日 A、Avery・・・ 宮本百合子 「「黄銅時代」創作メモ」
・・・今井へ行き、都で食事をし、east side に出かける、古本を見に。 二十一日 少し曇り気味の風の吹く日。ミス コーフィールドに電話で歎願して、パリセードに行く。 自分の膝に頭を横えて、静に涙をこぼす彼の上に風が吹・・・ 宮本百合子 「「黄銅時代」創作メモ」
・・・―― 自分は、座って サイドボールドの中を覗き 美しい柳の描いてある 水なし飴を一つつまみ ひとりで、部屋を見廻し 味わう。考えて見ると――貴女はそう思いませんか?人間そのものが芸術であると、思う。音楽や、絵や、建築・・・ 宮本百合子 「五月の空」
・・・ 自分の肖像 対照 大掃除 サイドボードを動かす 上の下らぬ大額をおろす。買い手が見つけられるから。「あれを買うって?」「本当?」「本当!」「へーえ、あれお父様ただ貰ったんだろう?」「そうじゃないらし・・・ 宮本百合子 「生活の様式」
・・・ R氏の家は、丁度市街に沿うてある細長いモーニングサイド公園に近いので、夕食後三十分か一時間も緩くりと散歩し、胃も頭も爽かになった時分に帰って、読書と、昼間書いた草稿を夫人に読んで聞かせ、忠言を得て字句の改正をする。夫人は、同じ灯の下で・・・ 宮本百合子 「男女交際より家庭生活へ」
・・・資本主義の国々では、ニューヨークでも、ロンドンでも、イースト・サイドといえば、西区の上流区域とはちがって労働者、外国移民、猶太人などの住む、より貧しいより生活の苦しい区画とされている。東京で麹町と江東地区との生活にちがいがあるとおりである。・・・ 宮本百合子 「婦人デーとひな祭」
出典:青空文庫