・・・「それから? あとはどうだい。」「家もぶっ壊さな。」「それから? それから? あとはどうだい。」「砂も飛ばさな。」「それから? あとは? それから? あとはどうだい。」「シャッポも飛ばさな。」「それから? それか・・・ 宮沢賢治 「風野又三郎」
・・・先生はぴかぴか光る呼び子を右手にもって、もう集まれのしたくをしているのでしたが、そのすぐうしろから、さっきの赤い髪の子が、まるで権現さまの尾っぱ持ちのようにすまし込んで、白いシャッポをかぶって、先生についてすぱすぱとあるいて来たのです。・・・ 宮沢賢治 「風の又三郎」
・・・又狸は少しこわれてはいましたが運動シャッポをかぶっていました。 けれどもとにかく三人とも死にました。 蜘蛛は蜘蛛暦三千八百年の五月に没くなり銀色のなめくじがその次の年、狸が又その次の年死にました。三人の伝記をすこしよく調べて見ましょ・・・ 宮沢賢治 「蜘蛛となめくじと狸」
・・・「な、な、な何が故に、何が故に、君たちはど、ど、動物を食わないと云いながら、ひ、ひ、ひ、羊、羊の毛のシャッポをかぶるか。」その人は興奮の為にガタガタふるえてそれからやけに水をのみました。さあ大へんです。テントの中は割けるばかりの笑い声で・・・ 宮沢賢治 「ビジテリアン大祭」
出典:青空文庫