・・・ 岸に上って見渡すと氷の上にある人間の姿はどれも黒く小さく、遠くにちらほらスケートしているものの顔だけぽっつり薔薇色である。発電所の煙突からは黒い太い煙が真直上った。 日本女は凍ったモスクワ河の景色を眺めてから、元へ戻り、或る一つの・・・ 宮本百合子 「子供・子供・子供のモスクワ」
・・・ こないだまでその上でみんながスケートをやってたと思うモスクワ河には河童どもがいっぱいだ。 夕方、仕事から引きあげて来ると、もう早い連中が、河の堤の青い草の上へ服をぬぎすてて、バシャバシャやってる。裸身の親父がまだボシャボシャするこ・・・ 宮本百合子 「ソヴェト労働者の夏休み」
・・・或る厳冬、マクシムを誘ってこの義兄弟どもは池へ出かけ、スケートと見せかけて、氷の裂け目からマクシムを水の中へ突落した。マクシムは氷のふちへ手をかけて浮き上ろうとする。ミハイロとヤーコブとは、ここぞとばかりその手の指を踵で踏みたくる。 マ・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの伝記」
出典:青空文庫