・・・ こういう役所の人たちが、日本の文化人のセンスの程度を余りよく知っていないということは、様々の現実の不便を招いているのだろうと思う。海外へおくる映画やそのほかのものに、屡々見当はずれで不成功なもののあるのは、こういう自分たちへの評価の明・・・ 宮本百合子 「国際観光局の映画試写会」
・・・はためにみれば、そもそも文学をはずれて繁栄している中間小説と、私小説がひとしお煮つまって一種のエッセイ風の作品となっている尾崎一雄の文学とを同列に語ることさえ、謂わば荒っぽいセンスである。「私小説の否定」というきょうの文学のやわたしらずの中・・・ 宮本百合子 「五〇年代の文学とそこにある問題」
・・・そこには卒直な物言いの人の知らないような、細かいセンスが働くであろう。私はそういうセンスが藤村の文体と密接に関係しているように感じる。一例をあげると、藤村のしばしば使っている「……と言って見せた」という言い回しである。前後の連関から見て、他・・・ 和辻哲郎 「藤村の個性」
出典:青空文庫