・・・読者が、新聞小説に求めている面白さの本質の問題から云わば制約の第一歩がはじまっていることも、時代風俗的なディテールへの作者の適応性が要求されていることも変りはないであろう。 しかし、今日の文学のありよう、作家のありようとの関係では、新聞・・・ 宮本百合子 「おのずから低きに」
・・・今は私もそのディテールを知って居るわけです。私はこっちで段々健康をとり戻し、好い小説を書きはじめる。 五月二十五日 〔市ヶ谷刑務所の顕治宛 本郷区駒込林町二一中條咲枝より[自注1]〕 きょうは御病気の様子が少しはっきりわかっ・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・森田沙夷などは、それぞれに愛すべき生活のディテールをとらえて、画に生活の感情をふき込もうとしているに対して煩悶のない有馬氏の「後庭」はじめ「温室」「レモンと花」「静物」等、殆どすべてがアトリエ中心であり、自足してそれぞれの生活の内にはまって・・・ 宮本百合子 「帝展を観ての感想」
・・・だけを見ても、内容の精密さ、遺漏なきを期せられている周到さがはっきりわかるのであるが、同時に、頁毎にくりひろげられるこの偉大な人間及芸術家の生活現象に密林はおそろしいほど鬱蒼としているものだから、そのディテールの中で迷いこんでしまわないため・・・ 宮本百合子 「『トルストーイ伝』」
出典:青空文庫