・・・を、嫉妬からデスデモーナを殺す悲劇の主人公とは見ず、相互に与えられていた信頼を裏切られた心の破局と理解することもわかる。そういう今日の共感に交えてデスデモーナのオセロにたいする封建的な屈従と畏怖とが、大切な愛をおどおどとさせ、才覚とほんとう・・・ 宮本百合子 「現代の主題」
・・・そして、悲劇もシェークスピアにおいては、何かその原因となるデスデモーナのハンカチーフのようなものをもっている。オセロの敏感な自尊心――黒人の劣等感のうらがえされたもの――そのものと、イヤゴーのユダ的性格そのものが、性格と性格の格闘として悲劇・・・ 宮本百合子 「心に疼く欲求がある」
・・・をみると、その女主人公デスデモーナの運命について、実に痛切に感じるものがある。 オセロはアフリカ生れの黒人の武将であった。勇敢な勝利者としてデスデモーナという、美しいヨーロッパの貴婦人を妻にした。ところがオセロの幕下にイヤゴーという奸物・・・ 宮本百合子 「女性の歴史」
・・・オセロの悲劇は美しくやさしいオセロの妻デスデモーナが、女として一枚のハンカチーフをどう扱ったかというところにかかっている。 エミール・ヤニングスが映画のオセロに扮したとき、彼はそのもち味で、黒人の英雄であるオセロの直情径行の素朴な人間性・・・ 宮本百合子 「デスデモーナのハンカチーフ」
・・・真夏の夜の夢。デスデモーナのハンカチーフ。単行本。『伸子』〔第二部〕。播州平野。作家と作品。貧しき人々の群。歌声よおこれ。幸福について。宮本百合子選集第一巻、同第三巻。新しい婦人と生活。真実に生きた女性たち。婦人と文学。・・・ 宮本百合子 「年譜」
・・・「郵便切手」そのほかの最近書いたものに、未発表のいくつかを加えた。「兄と弟」「書簡箋」「ベリンスキーの眼力」などは太平洋戦争中、作品の発表できなかった時分のノートから。「真夏の夜の夢」「デスデモーナのハンカチーフ」「復活」などは、珍しく芝居・・・ 宮本百合子 「はしがき(『女靴の跡』)」
・・・の書棚で私たちの見出すのは何だろう。 シェークスピア全集は随分流布した。「ハムレット」のオフェリヤ。「マクベス」のマクベス夫人。「ベニスの商人」のポーシャ。「リア王」の三人の娘たち。「オセロ」のデスデモーナ。色とりどりの可憐さ、鮮やかな・・・ 宮本百合子 「若い婦人のための書棚」
出典:青空文庫