・・・ パリの文化擁護の大会ニュースは、混迷停滞しきっていた当時の日本の文化人、文学者に、新しいヒューマニズムの希望を与えた。新しいヒューマニズム、その能動精神、その行動性という観念がよろこび迎えられて、間もなく雑誌『行動』がうまれ、舟橋聖一・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第十巻)」
・・・の作者は、これらのすべてについて全く知らないか、或はごく部分的に、ブルジョア新聞のニュース風に皮相的にしかしらなかった。けれども、この年の秋の関東地方の大震災につづく大杉栄、伊藤野枝、その甥である男の子供の虐殺。各地における朝鮮、中国労働者・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第二巻)」
・・・小さい道をへだてて、バラックのトタン屋根が暑い日をてりかえし、スダレの奥から大きな声でラジオのニュースが響いている。「――して華々しい戦果をおさめました」 東京に、またこんなラジオがきこえはじめた。広島を平和都市に!長崎・・・ 宮本百合子 「いまわれわれのしなければならないこと」
・・・というのとニュースとが見られるわけである。私は特別にその映画を目ざして行ったのではなかったが、観てもいいという心持で、列の最後の方にまわって傘をさしたまま往来に立っていた。「ちょいと、まだ大丈夫よ! ホラ、見なさいってば……」 その・・・ 宮本百合子 「映画」
・・・その年の十二月二十日すぎの或る夜、夕刊に、宮本顕治が一年間の留置場生活から白紙のまま市ヶ谷刑務所へ移されたというニュースが出ていたと、一人の友人が知らせてくれた。作者はそのとき、思わずああ! と立ち上って、殺されなかった! とささやいた。一・・・ 宮本百合子 「解説(『風知草』)」
・・・そして喜ばしいニュースが巷に飛び交っていた。マルヌの戦闘が始まってドイツ軍の攻撃は阻止された。 二人の娘たちはまだブルターニュにいた。マリアは彼女たちに向って、この新しい希望を語り「小さいシャヴァンヌに物理学の勉強をさせなさい。あなたは・・・ 宮本百合子 「キュリー夫人」
・・・そのために、その費用の支出にたえ調査機関としての人手をもち、同時にその世論調査そのものがそれを行う経営にとってあるニュース・バリューをもって宣伝に役立つ場合、世論調査がとりあげられやすい。日本のように民間の世論調査機関が発達していず、しかも・・・ 宮本百合子 「現代史の蝶つがい」
・・・わたしは新聞の上に一つのニュースをよんだ。それは最新化学兵器についてのニュースだった。おそろしい化学力をもつその兵器の効果は、すべての人類をたちまち醜い不具にして、死滅させる威力をそなえているものであると説明されている。それを公表しているの・・・ 宮本百合子 「権力の悲劇」
・・・その門から処女製作のソヴェト・フォード第一号が、歓呼の声に送られて動き出した時の光景は、ソヴキノの映画ニュースをとおして、モスクワの労働者の胸にまでつよく刻みこまれている。 ニージュニに新しくソヴェト・フォード製作工場が出来たという事実・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・「ニュースない?」「蔵原、やっぱりひとりらしい」「…………」 留置場の便所には戸がない。流しから曲ったところが三尺に一間のコンクリで、突当りに曇った四角い鏡が吊ってある。看守が用便中のものを監視する為の仕かけである。窓のない・・・ 宮本百合子 「刻々」
出典:青空文庫