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・・・ 華やかで遊惰な雰囲気のニースでバルコンある別荘に住み、恐らくはロシアからかくしてもって逃げて来た金袋を減らしながら、思い出がたりで暮していたであろうお祖母さんオリガの、嘗てあった生活の幻を注ぎこまれて、中途半端な育ちかたをしたことは、・・・
宮本百合子
「ジャンの物語」
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・・・マリアは少女時代を南フランスのニースで育った。当時ロシアの貴族はフランス語を社交語として暮していたばかりでなく、マリアのこういう特別な境遇が一層フランス語を彼女の言葉にした。それで、自分の名もフランス流に、父称を略して呼ぶようになったのであ・・・
宮本百合子
「マリア・バシュキルツェフの日記」