・・・この三人が、姫君のためにはハッピーエンド、彼らの目には悲劇であるかもしれない全編の終局の後に、短いエピローグとして現われ、この劇の当初からかかっていた刺繍のおとぎ話の騎士の絵のできあがったのを広げてそうして魔女のような老嬢の笑いを笑う。運命・・・ 寺田寅彦 「音楽的映画としての「ラヴ・ミ・トゥナイト」」
・・・近衛秀麿氏が今度それを改作する由、お蝶夫人が歌手で、ピンカートンである音楽家が京都へ演奏旅行をして、最後は、お蝶がヨーロッパへ演奏に行ってその音楽家と出会いハッピーエンドになるように改作するのだそうである。映画はこの筋を既につかい古している・・・ 宮本百合子 「雨の小やみ」
・・・よろこびとハッピーエンドにとどまるのは残念である。「春龍胆」柔かく抒情的にまとまっている。「何日かは春に」も、素朴だけれども、結核の治癒の可能についての、明るい善意がある。二篇とも、ストレプトマイシンが無料で闘病者のベッドに訪れて来る日・・・ 宮本百合子 「『健康会議』創作選評」
出典:青空文庫