・・・沢山のバイブル物語をおそわった。小学一年生で、友達の告げ口をした時、つねられた。死の恐怖を知ったのはこの省吾伯父の没した時であった。 書簡註。この年、父が事務的な用向をもってニューヨークへ赴き、二十歳ばかりの私も伴われ・・・ 宮本百合子 「中條精一郎の「家信抄」まえがきおよび註」
・・・縛られて生きて来た。バイブルに噛りついて来た。そして、気がついて見ると――拵え事だ! 拵えごとだよ」 そして、手を振廻し泣かんばかりに叫んだ。「見ろ――そのために俺は実際より早く死ぬんだ!」 おお、何んと汚い、悲しい、そして不思・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの伝記」
・・・ 世界で一番きたない本はバイブルである、という意味のニーチェの言葉が警句というより深い意味をもっているとすれば、それはガリレオ・ガリレーの生涯やホーソンの「緋文字」を見てもわかるとおり、どっさりの人類の叡智や生命や愛が、その一冊の分厚い・・・ 宮本百合子 「ものわかりよさ」
出典:青空文庫