・・・女の生理の悲しさについて深刻に悩むことなぞありゃしない、俺を驚かせた照井静子の奔放な性生活なぞこの女に較べれば、長襦袢の前のしみったれた安パジャマに過ぎないぞ。そう思うことによって、私は静子の肉体への嫉妬から血路を開こうとした。お定を描こう・・・ 織田作之助 「世相」
・・・「ちりめんは御免だ。不潔でもあるし、それに、だらしがなくていけない。僕たちは、どうも意気ではないのでねえ。」「パジャマかね?」「いっそう御免だ。着ても着なくても、おなじじゃないか。上衣だけなら漫画ものだ。」「それでは、やはり・・・ 太宰治 「雌に就いて」
・・・ せんたく屋の場面では物干し場の綱につるしたせんたく物のシャツやパジャマが女を相手に踊るという趣向がある。少しふざけ過ぎたようであまり愉快なものではないが、しかし、これなども映画で見ればこそ、それほどの悪趣味には感ぜられないで、一種のフ・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(4[#「4」はローマ数字、1-13-24])」
・・・木曜会で集まっている席へ、パジャマに着かえた愛らしい姿で、お休みなさいを言いに来たこともある。私は直接なじみになっていたわけではなく、漱石の没後にも、一時家を出ていたころに、九日会の日に玄関先で見かけたぐらいのものであった。だからベルリンの・・・ 和辻哲郎 「漱石の人物」
出典:青空文庫