・・・ふつうのパンフレットです」「すぐそんなことを言うからな。君のことは実にしばしば話に聞いて、よく知っています。ジッドとヴァレリイとをやりこめる雑誌なんだそうですね」「あなたは、笑いに来たのですか」 私がちょっと階下へ行っているまに・・・ 太宰治 「ダス・ゲマイネ」
・・・という題の、二十頁そこそこのパンフレットでございましたから、引受けて印刷する事になったのでございますが、私はいつもその原稿を読み活字を拾い、しだいに文学熱にかぶれて、本屋へ行って当時の大家の詩集なども買って来て読むようになり、だんだん自信の・・・ 太宰治 「男女同権」
・・・ すぐ赭ら顔の白髪の元気のよさそうなおじいさんが、かなづちを持ってよこの室から顔〔以下原稿数枚なし〕が、桃いろの紙に刷られた小さなパンフレットを、十枚ばかり持って入って来ました。「お早うございます。なあに却って御愛嬌ですよ。・・・ 宮沢賢治 「ビジテリアン大祭」
・・・この筆者は警視庁の特高課から手記を出版されたパンフレットの執筆者で、モスクから脱出してきた見聞記と称して「モスク」を発表した。また、トロツキーの「裏切られた革命」を大綜合雑誌が別冊附録としたようなジャーナリズムの気風についても見のがしていな・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第十一巻)」
・・・ 五ヵ年計画に関するパンフレット。 政治。 党に関する文献。 反宗教。 そういう貼紙が本棚の各段ごとにある。人が絶え間なくその前にたかり、或る者は手帳を出して書名をひかえている。或る者は直ぐ黒い上被りを着た店員に別の棚か・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェト同盟の文化的飛躍」
・・・軍時に、ソヴェト軍隊と、交戦中の敵国住民大衆にアッピールするものと仮定したパンフレット、それにはクラブ用の小脚本、レヴュー台本、プラカート用の詩、スローガンなどを盛りこんだパンフレットの発行である。 軍事状態の中にあって各自の文学的政治・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・河合栄治郎の公判記録が、『自由に死す』というパンフレットになって刊行された。彼のような穏当な学究さえも彼の理性が超国家主義と絶対主義に服従しないで立っているという理由で起訴され裁判された。河合栄治郎が学者としての良心の最低線を守ろうとした抵・・・ 宮本百合子 「五〇年代の文学とそこにある問題」
・・・統計表と数字とで一杯なパンフレットを。絶対にそれは読まねばならぬのだ。若し散歩した時ソヴェト広場にある、電燈入り地図の意味を知りたいと思うなら。 СССРで一九二六年に五千七十七万千九百九十七人あった文盲者が一九三〇年には既に四千三百万・・・ 宮本百合子 「子供・子供・子供のモスクワ」
・・・ イギリスの皮肉屋の爺さんであるバーナード・ショウだの、現代物理学の神であるアインシュタインだのが日本の能楽の価値を理解したのは、文化への共感として当然であるけれども、そして、外務省が出版する雑誌やパンフレットに能の美を語る理由もわかるが・・・ 宮本百合子 「今日の生活と文化の問題」
・・・あの時、或る作家の文章が、その部分を切って、名をかくして人に読ませたら、おそらく読まされた者は駅売りのパンフレットのような種類の文章の中の数行を読まされたのだと思うに相違ない文章の書きかたであったのを、つよく印象づけられている。 書いて・・・ 宮本百合子 「今日の文学の諸相」
出典:青空文庫