・・・ある大学から、ピンポンのたくみなる選手がひとり出るとその大学から毎年、つぎつぎとピンポンの名手があらわれる。伝統のちからであると世人は言う。ピンポン大学の学生であるという矜持が、その不思議の現象の一誘因となって居るのである。伝統とは、自信の・・・ 太宰治 「古典竜頭蛇尾」
・・・私は五、六年前から、からだの調子を悪くして、ピンポンをやってさえ発熱する始末なのである。いまさら道場へかよって武技を練るなどはとても出来そうもないのである。私は一生、だめな男なのかも知れない。それにしても、あの鴎外がいいとしをして、宴会でつ・・・ 太宰治 「花吹雪」
・・・近代的のものでもゴルフの外に庭球野球蹴球籠球排球などがあり、今は流行らぬクリケット、クロケーから、室内用にはピンポン、ビリアードそれから例のコリントゲームまである。日本の昔でも手鞠や打毬や蹴鞠はかなり古いものらしい。 人間ばかりかと思う・・・ 寺田寅彦 「ゴルフ随行記」
・・・小瀬へ行ってみるとその男はもうちゃんと宿屋に納まって子供とピンポンをやっていた。人間は勘違いしたり、故意にだましたりしても、五万分一地形図はいつも正直である。たまに、万に一の地図の誤りを指摘して小言をいう好事家があるにしても陸地測量部地形図・・・ 寺田寅彦 「地図をながめて」
・・・やがて私が、教員室から運動場へ出る段の前に据えられたピンポン台の前に立って、意地悪いほど熱中した眼をしながら、白い小球を、かん、かん、かん、かんと打ち返し、打ち損じているのを見るだろう。 ――思い出は多い。半開人のような自分を中心にして・・・ 宮本百合子 「思い出すかずかず」
・・・になると、体育室、水泳プール、大きな演劇の舞台、軍事教育、ラジオ、ピンポン、衛生室、図書室、外国語の研究室、食堂などまである。 共同農場でも同じ様で、大きなものになると、収穫時にはキャンプ生活をやるのだが、その一つのキャンプが「クラブ」・・・ 宮本百合子 「ソヴェトの「労働者クラブ」」
出典:青空文庫