フットボールは、あまり坊ちゃんや、お嬢さんたちが、乱暴に取り扱いなさるので、弱りきっていました。どうせ、踏んだり、蹴ったりされるものではありましたけれども、すこしは、自分の身になって考えてみてくれてもいいと思ったのであります。 し・・・ 小川未明 「あるまりの一生」
・・・ 釣りあげられた河豚は腹を立てて、まん丸く、フットボールのようにふくらんだ。これを船底にたたきつけると、パチンと腹の皮が破裂するのだが、それも可哀そうなのでほっておいた。ところが、いつまで経ってもふくれあがったままで怒っている。友人が笑・・・ 火野葦平 「ゲテ魚好き」
・・・ 籠はフットボールのようにぽんぽん跳ねて一太にぶつかった。おかしい。面白い。一太は気のむくとおり一人で、駈けたり、ゆっくり歩いたりして往来を行った。 一太は玉子も売りに出た。 玉子のときは母親のツメオが一緒であった。玉子を持って一太・・・ 宮本百合子 「一太と母」
・・・ 体育室からは、フットボールの弾む音がする。 あまりいきなり廊下の頭の上でジリリリッ! と開会を知らせるベルが鳴ったので、ニーナとナターシャはびっくりして互につかまり合い、やがて大笑いしながら、四五百人はいる大広間へ入って行った。〔・・・ 宮本百合子 「ソヴェト同盟の三月八日」
・・・ ただ、フットボール競技場前の広場へ、アルバート広場に群っている通りな、いろんな物売りが出ていて、あっちから巡査がやって来るのを見るとパッと蜘蛛の子ちらすように逃げ出すところは、活々した日常生活の光景からの断片で、そこのところで笑わない・・・ 宮本百合子 「ソヴェトの芝居」
・・・「原子爆弾をフットボールのようにもてあそばせてはならない」この真理は、エレンブルグがいうばかりでなく、エディンバラで開かれようとしている、国際ペンクラブの年次大会でも、そこに集るそれぞれの国の文学者たちによってつよく声明されるであろう。日本・・・ 宮本百合子 「私の信条」
出典:青空文庫