・・・偏光を生じるニコルのプリズムを通して白壁か白雲の面を見ると、妙なぼんやりした一抹の斑点が見える。すすけた黄褐色の千切り形あるいは分銅形をしたものの、両端にぼんやり青みがかった雲のようなものが見える。ニコルを回転すると、それにつれて、この斑点・・・ 寺田寅彦 「錯覚数題」
・・・その種々相を透して、さながら、プリズムの転廻を見るように、種々雑多な人間性が現われて参ります。 その一色をも逃すまいとして、私はどんなに緊張して居りますでしょう。目前に現われて居るのは、本の上に印刷された理論的な文字ではございません。生・・・ 宮本百合子 「C先生への手紙」
・・・次に問題となったのは、プリズムやレンズなどであるが、羅山はキリシタンに対する憎悪をこういう道具の上にまであびせかけ、光線の現象などに注意を向けようとはしていない。最後に取り上げられたのは、『妙貞問答』やマテオ・リッチの著書などである。羅山は・・・ 和辻哲郎 「埋もれた日本」
出典:青空文庫