・・・一つの句は一つだけ、自身のマンネリズムで作るなということもきびしい表現で云っていて面白い。芸術と人生の生きかたを刻々に流れ動きしかも不易である豊富な生命に一致させようという志から、一笠一杖の生活も発している。僧侶風な遁世とは違う。今日私たち・・・ 宮本百合子 「芭蕉について」
・・・興業師のマンネリズムがカッスル・ウォークの真価をみとめないで苦境におかれるという関係の面だけは後で説明しているけれども。 アステアの踊りの感覚からおしはかると、そういうピエロの悲しみが決して分らない男だとは思えない。監督が何か表面の筋に・・・ 宮本百合子 「表現」
・・・について 近頃は一方に万葉、王朝時代の精神ということが特殊な根拠の上に云われているけれども、現実に今日の日本人の生活感情の内部にものこっていて、美的感覚などの裡にマンネリズムとして余韻をひいているものは寧ろそれ以後の、「さび」とか「・・・ 宮本百合子 「文学上の復古的提唱に対して」
・・・荷風は花柳界が時代にとりのこされているものであることも十分承知の上で、ただこのマンネリズムの中にだけ彼の無上に評価する日本の伝統の美が保たれている、女の身ごなし一つにさえその歴史の、みがきがあらわれていると見て、自身を忘られようとする美の騎・・・ 宮本百合子 「歴史の落穂」
出典:青空文庫