・・・ある新聞社が、ミス・日本を募っていたとき、あのときには、よほど自己推薦しようかと、三夜身悶えした。大声あげて、わめき散らしたかった。けれども、三夜の身悶えの果、自分の身長が足りないことに気がつき、断念した。兄妹のうちで、ひとり目立って小さか・・・ 太宰治 「愛と美について」
・・・女子大の校庭のあさましい垣のぞきをしたり、ミス何とかの美人競争の会場にかけつけたり、映画のニューフェースとやらの試験場に見学と称してまぎれ込んだり、やたらと歩き廻ってみたが、いない。 獲物は帰り道にあらわれる。 かれはもう、絶望しか・・・ 太宰治 「グッド・バイ」
・・・ある新聞社が、ミス・日本を募っていた時、あの時には、よほど自己推薦しようかと、三夜身悶えした。大声あげて、わめき散らしたかった。けれども、三夜の身悶えの果、自分の身長が足りない事に気がつき、断念した。兄妹のうちで、ひとり目立って小さかった。・・・ 太宰治 「ろまん燈籠」
・・・恰も Miss Read、孝夫、信子氏あり。三人の帰後余は夫人の為に手紙の代筆などし少しく語りたる後辞し帰りぬ。 神よ、余は此の筆にするだに戦きに堪へざる事あり。余は余の謬れるを知る。余は暫く信子氏と相遭はざりき。而して今日偶彼女と遭ひ・・・ 宮本百合子 「「或る女」についてのノート」
・・・二月 一日 Ideal husband を Miss Wells と見る。 二日 日曜。始めて Jefferson の説教を聞く。 三日二月 八日 始めての雪。Avery で、午後こっそりお菓子を買いに行って・・・ 宮本百合子 「「黄銅時代」創作メモ」
・・・ 二十一日 少し曇り気味の風の吹く日。ミス コーフィールドに電話で歎願して、パリセードに行く。 自分の膝に頭を横えて、静に涙をこぼす彼の上に風が吹く。 二十二日 鶴見、河井、其他星野等と食事に招れる。 二・・・ 宮本百合子 「「黄銅時代」創作メモ」
・・・日本風なすき焼部屋。ミスが、面白い変化物語と、アナトール・フランス風の話をした。変化物語、なかなか日本の土俗史的考証が細かで、一寸秋成じみた着想もあり、面白かった。 九時過Nさんと自動車で、自分林町へ廻る。離れにKと寝る。いろいろ話し、・・・ 宮本百合子 「狐の姐さん」
・・・それだからこそ、映画女優を志願して、故郷のオクラホマからハリウッドへは行かずニューヨークへ出たミス・スチュアートが、メトロ映画会社に認められて契約を結んだ、というような小事実が、僥倖の一つとして日本の読者にまで写真入りで伝えられるのである。・・・ 宮本百合子 「政治と作家の現実」
・・・ “I am quite all right, so far I keep still.” ○八十一 ミス、バチェラー ○五十前後。 ○やせた、鼻と顎がコーモリのように見える婦人、 ○赤っぽい、波のな・・・ 宮本百合子 「一九二五年より一九二七年一月まで」
・・・ 荷もつに火がつくので水をかける、そのあまりをかい出すもの、舟をこぐもの分業で命からがらにげ出したのだ。 吉田さんの話。 Miss Wells と、日本銀行に居た。これからお金を貰おうとしたとき地なりがしたので吉田さんはああ・・・ 宮本百合子 「大正十二年九月一日よりの東京・横浜間大震火災についての記録」
出典:青空文庫