・・・という語は、世界において分布区域の甚だ広い語で、我国においてもラテンやゼンドと連なっているのがおもしろい。禁厭をまじないやむると訓んでいるのは古いことだ。神代から存したのである。しかし神代のは、悪いこと兇なることを圧し禁むるのであった。奈良・・・ 幸田露伴 「魔法修行者」
・・・それでもし生徒が文学的の傾向があるなら、それにはラテン、グリーキも十分にやらせて、その代り性に合わない学科でいじめるのは止した方がいい……」 これは明らかに数学などを指したものである。数学嫌いの生徒は日本に限らないと見えて、モスコフスキ・・・ 寺田寅彦 「アインシュタインの教育観」
・・・ ラテンで「あるいはAあるいはB」という場合に alius A, alius B とか、alias A, alias B とか、また vel A, vel B という。alius と vel とは別物であるのに、どちらも日本の「アル・・・ 寺田寅彦 「言葉の不思議」
・・・フィンランドのフィル。ラテンのピパ。などみんな擬音らしくもありまた関係があるらしくもある。オボーなどもこれと従兄弟である。 おもしろい事には全然ちがった楽器の名前が同じような音から成り立っている例のかなり多いことである。たとえば笛のピパ・・・ 寺田寅彦 「日本楽器の名称」
・・・ 入学証書と云ったような幅一尺五寸長二尺ほどの紙に大きな活字で皇帝や総長の名を黒々と印刷したものを貰ったが文句はラテン語で何の事か分らない、見ていると気の遠くなるようなものであった。日附の所に D. Berolini d. 19. me・・・ 寺田寅彦 「ベルリン大学(1909-1910)」
・・・You must read Latin at least. *2といわれた。しかしまた先生は時に手ずから煙草をすすめられ、私は煙草を吸いませぬと申上げると、先生は Philosoph muss rauchen. *3とからかわれた。 当・・・ 西田幾多郎 「明治二十四、五年頃の東京文科大学選科」
・・・西洋の学者は、必ずラテン、ギリーキの古語を学び、そのほか五、六ヶ国の語に通ずる者少なからず。東洋諸国に来たる欧羅巴人は、支那・日本の語にも通じて、著述などするものあり。西洋人に限り天稟文才を備うるとの理もあるまじ。ただ学問の狭博はその人の勉・・・ 福沢諭吉 「学校の説」
・・・ 新しいラテン文化の地へ! というスローガンを文化科学の全面に押し出しているのである。 イタリーでは今「脱出の文学」ということが云われているそうである。アフリカという土地に於て、そこの新しい条件に立ってモラルも、行動も、世界観も新しい価・・・ 宮本百合子 「イタリー芸術に在る一つの問題」
・・・兵士は二人ともラテン系のアメリカ人で、カールした髪が、帽子の下からはみ出ている。彼等としては、普通に国で女の子と喋る時のように喋っているつもりであろうけれども、その栄養のよい体の楽々とした吊皮への下りようや、何か云っては娘の顔を覗く工合が、・・・ 宮本百合子 「その源」
出典:青空文庫