・・・彼等の俳優としてのそういう熱意が快く感じられると共に、中国の現実そのものの力が、今日国際的な関心の性質を次第に真面目な人間的なリアリスティックなものに変えつつあることを痛感したのである。 ただ残念なことにこの「大地」もアメリカ映画特有の・・・ 宮本百合子 「映画の語る現実」
・・・では、そのようなロマンティックな要素も作品の一つの色彩とはしつつ、作者はぐっとリアリスティックに心理と経済の事情にまで広く多岐に踏みこんで、一人の君主の死が、武家社会に波及させた悲劇と生死の幾とおりもの姿を描き出している。作者はこの事件をめ・・・ 宮本百合子 「鴎外・芥川・菊池の歴史小説」
作者が添えた手紙でことわっている通り、まだ稚い作品ではあるけれどもリアリスティックな文学の筋の上に立っている。習作ではあるが『大衆クラブ』などにのせれば同感をもってよむひとは少くないだろうと思った。 作者の心持が稚くて・・・ 宮本百合子 「稚いが地味でよい」
・・・ケーテはモデルへつきない同感を、リアリスティックなつよい線と明暗とで、確り感傷なく描き出して、忘れ難い人生の場面は到るところに在るということを示しているのである。 世界の美術史には、これまでに何人かの傑れた婦人画家たちの名が記されている・・・ 宮本百合子 「ケーテ・コルヴィッツの画業」
・・・だが、二応、三応と、実際の客観的事情に照らし合わせて考えて見た場合、こういう風に様式化したまんまの人物を無制限につかって、どの程度のリアリスティックな芸術の感銘を与えることが出来るかという点は、疑問になって来る。 何故なら、ソヴェト同盟・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・その身について来たものの一つの例であるが、大きい文学に必要な豊富でリアリスティックな想像力というものは、現実をよくつかんで、しって、噛みくだいていなければ生じぬものですね。そして、そういう力なしに大きい作品は書けないのだが、私は自分が過去二・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・けれども、職人と芸術家とをよりわける、彼女の魂の満足はフランス人の形式のうちにはなくて、スーのリアリスティックな直観のうちにあった。 どうして君は女に生れて来たんだ。その老匠は眉をひそめて口髭を一ひねりした。どうして君は女に生れて来たん・・・ 宮本百合子 「『この心の誇り』」
・・・ロマンティックな情感とともにリアリスティックに、成長的に現実にふれてゆこうとしている幼い作者の努力をくみとることが出来る。 この作品は、作者が年若い少女であったことと、その少女の生活環境にあわして社会的に積極的な取材であったこと、単純だ・・・ 宮本百合子 「作者の言葉(『貧しき人々の群』)」
・・・ 今日文学が作者の念願しているだけ十分にリアリスティックであり得ないという実際の事情は普遍的だから、誰しも身にひき添えて肯けるのであるけれども、それを理由にいきなりロマンティックな文学時代の招来へ飛躍されるのは、文学の問題としてみると、・・・ 宮本百合子 「作家と時代意識」
・・・チンダルは科学者の心持で終始一貫して、その科学精神の勁くリアリスティックであることから独特の美を読者に感じさせる。所謂文学的な辞句の努力や文学的感情と云われているものやへの人為的な屈折なしに、すっきりとした高い人間らしい美を示している。科学・・・ 宮本百合子 「作家のみた科学者の文学的活動」
出典:青空文庫