・・・昼は熱く夜は寒いというが、ロケットに乗って行って見ることができたら、どんなだろう……」と、さまざまに空想を逞うするにちがいないからです。 これを要するに、兎が餅を搗いているといった時代の子供の知識はその生活状態と調和していたがために・・・ 小川未明 「新童話論」
・・・いずれが真珠、いずれが豚、つくづく主客てんとうして、今は、やけくそ、お嫁入り当時の髪飾り、かの白痴にちかき情人の写真しのばせ在りしロケットさえも、バンドの金具のはて迄。すっからかん。与えるに、ものなき時は、安(とだけ書いて、ふと他のこと考え・・・ 太宰治 「創生記」
・・・その顎のまわりに父はペンをとって細い一連の鎖とロケットとを描き、ロケットの心臓型の表には、はっきり小さくYと刻まれている。母の名は葭江である。 書簡註。若い娘が三つのリンゴを掌の上に舞わして遊んでいる。イギリスの子供の・・・ 宮本百合子 「中條精一郎の「家信抄」まえがきおよび註」
出典:青空文庫