・・・ 自分の良人を深く深く愛し、謙遜に、恭々しく、出来るだけの努力でその愛を価値高い、純粋なものに浄化させて行き度いと希う自分は、最も計り難い、最も絶対な一大事として、愛する良人との死別ということをも考えずにはいられなく成ったのです。 ・・・ 宮本百合子 「偶感一語」
・・・私は、到頭その紙をそろりと引出し、一大事のような亢奮を覚え乍ら、それで手紙を書き、友達に出した。その友達が、お手紙有難うと云ったぎりで、あのエクサイティングな紙については一言も言及してくれないのが、非常に物足りなかった。何もわからない人なの・・・ 宮本百合子 「木蔭の椽」
・・・信実の愛はこう相談する「さて家事が一大事だね、どういう風にやれるだろう。」考え深い普通の声でこう相談が持ち出された時、そこには現実的な助力と生きた愛がある。二人が二人のこととして辛抱しなければならないことがはっきりと見られる。従ってそれを解・・・ 宮本百合子 「人間の結婚」
・・・等は精密を極めた考証とともにしらべられて、それぞれの見解はその道の人々にとっての一大事とされている。私たちはそういう或る意味では煩瑣な芭蕉学から離れ、きょうのこの心のままで彼の芸術にふれてゆくのであるが、それなりに生々とした感銘をうけ、感覚・・・ 宮本百合子 「芭蕉について」
出典:青空文庫