・・・大阪サロン編輯部、春田一男。太宰治様。」「君の葉書読んだ。単なる冷やかしに過ぎんではないか。君は真実の解らん人だね。つまらんと思う。吉田潔。」「冠省。首くくる縄切れもなし年の暮。私も、大兄お言いつけのものと同額の金子入用にて、八方狂・・・ 太宰治 「虚構の春」
・・・間もなく、世話する人があって、新帰朝の仙之助氏と結婚した。一男一女をもうけた。勝治と、節子である。その事件のおこった時は、勝治二十三歳、節子十九歳の盛夏である。 事件は既に、その三年前から萌芽していた。仙之助氏と勝治の衝突である。仙之助・・・ 太宰治 「花火」
・・・西洋文明の諸国においても皆然らざるはなきその中についても、日本の如きは最も甚だしきものにして、古来の習俗、一男多妻を禁ぜざるの事実を見ても、大概を窺い見るべし。西洋文明国の男女は果たして潔清なりやというに、決して然らず、極端について見れば不・・・ 福沢諭吉 「日本男子論」
・・・大河内一男教授が帝大新聞に青少年の犯罪の増加について書かれたことがあった。国民学校の上級生から中学、専門学校に至るまで、学徒は動員されて工場に働いていたのであるけれども、不規律な工場の労働と、青少年の正しい娯楽設備のない社会の実情とは、急に・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
出典:青空文庫