・・・ そもそも今日の社会に、いわゆる宗旨なり、徳教なり、政治なり、経済なり、その所論おのおの趣を一にせずして、はなはだしきは相互に背馳するものもあるに似たれども、平安の一義にいたりては相違うなきを見るべし。宗旨・徳教、何のためにするや。善を・・・ 福沢諭吉 「教育の目的」
・・・詠歌には巧なれども自身独立の一義に就ては夢想したることもなく、数十百部の小説本を読みながら一冊の生理書をも見たることもなき女史こそ多けれ。況して小説戯作は往々人の情を刺すこと劇しくして、血気の春とも言う可き妙年女子の為めには先ず以て有害にこ・・・ 福沢諭吉 「新女大学」
・・・一身すでに独立すれば、眼を転じて他人の独立を勧め、ついに同国人とともに一国の独立を謀るも自然の順序なれば、自主独立の一義、もって君に仕うべし、もって父母に事うべし、もって夫婦の倫をまっとうし、もって長幼の序を保ち、もって朋友の信を固うし、人・・・ 福沢諭吉 「徳育如何」
・・・右の如く、人の自由独立は大切なるものにて、この一義を誤るときは、徳も脩むべからず、智も開くべからず、家も治らず、国も立たず、天下の独立も望むべからず。一身独立して一家独立し、一家独立して一国独立し、一国独立して天下も独立すべし。士農工商、相・・・ 福沢諭吉 「中津留別の書」
・・・ゆめゆめあるまじき事にして、徹頭徹尾、恕の一義を忘れず、形体こそ二個に分かれたれども、その実は一身同体と心得て、始めて夫婦の人倫を全うするを得べし。故に夫婦家に居るは人間の幸福快楽なりというといえども、本来この夫婦は二個の他人の相合うたるも・・・ 福沢諭吉 「日本男子論」
・・・啻に戦争の勝敗のみに限らず、平生の国交際においても瘠我慢の一義は決してこれを忘るべからず。欧州にて和蘭、白耳義のごとき小国が、仏独の間に介在して小政府を維持するよりも、大国に合併するこそ安楽なるべけれども、なおその独立を張て動かざるは小国の・・・ 福沢諭吉 「瘠我慢の説」
・・・詠歌には巧みなれども自身独立の一義については夢想したこともなく、数十百部の小説をよみながら一冊の生理書をよんだこともない婦人の多いのをなげき、「学問の教育に至りては女子も男子も相違あることなし。」それが原則であるけれども、日本のように女の学・・・ 宮本百合子 「三つの「女大学」」
出典:青空文庫