・・・よりほかの語が出て来なかったのである、正直なる余は苟且にも豪傑など云う、一種の曲者と間違らるるを恐れて、ここにゆっくり弁解しておくなり、万一余を豪傑だなどと買被って失敬な挙動あるにおいては七生まで祟るかも知れない、 忘月忘日 人間万事漱・・・ 夏目漱石 「自転車日記」
・・・ 事によったら七生までの勘道(や。 栄蔵は、自分と同年輩の男に対する様な気持で、何事も、突発的な病的になりやすい十七八の達に対するので、何かにつけて思慮が足りないとか、無駄な事をして居るとか思う様な事が多かった。「まあ飛・・・ 宮本百合子 「栄蔵の死」
・・・七巻きとか七巻き半とかいう表現は、仏教の七生までも云々という言葉とともに、あることがらを自分の目前から追い払ってもまだそれはおしまいになったわけではないぞよ、という脅嚇を含んでいる。自分たちの棲んでいる地球を天界の外から見た人はないのだから・・・ 宮本百合子 「幸運の手紙のよりどころ」
・・・物質のもとは不滅であるという唯物論的一元論を、川端康成は、この作品中で七生輪廻や転生の可能へねじまげてしまっている。 よしんば、作者自身龍江ほどそれを現実としては信じないまでもこういう霊界物語にひどく「抒情歌」の美を感じ、その美をとぎあ・・・ 宮本百合子 「文芸時評」
出典:青空文庫