・・・ その中で、自分が草臥れきって眠っていた下関発の夜汽車は、丹那で大断層の起った少しあと三島駅を通過した。 伊豆地方の大震災 惨たる各地の被害 震源地は丹那盆地 死者二百三十二名 伊豆震災救済策 震災地方の納税減免・・・ 宮本百合子 「ニッポン三週間」
・・・岸田国士、福田恆存、三島由紀夫、木下順二そのほか相当の数の文学者たちの集団である。小説や評論の現在の状態に感じられている一種のゆきづまりを、「もっと広く、窓を外に開こうとする要求がみられているし」「芝居が文学の広い領域から栄養を摂らなければ・・・ 宮本百合子 「人間性・政治・文学(1)」
・・・ 店の横にある二畳から真直階子を登ろうとすると、神さんは、「ちょいと、三島さん」 変に潜めた声で藍子を呼び止めた。「なんです」 黙って眼と手でおいでおいでをしながら自分も立って来た。「お客さまなんですよ」 藍子は・・・ 宮本百合子 「帆」
・・・ 民間説話に題材を取ったらしい物語のなかで、最も目につくのは、伊予の三島明神の縁起物語『みしま』である。この明神はもと三島の郡の長者であった。四万の倉、五万人の侍、三千人の女房を持って、栄華をきわめていたが、不幸にして子がなかった。で、・・・ 和辻哲郎 「埋もれた日本」
出典:青空文庫