・・・あれがいま爆発すれば、ガスはすぐ大循環の上層の風にまじって地球ぜんたいを包むだろう。そして下層の空気や地表からの熱の放散を防ぎ、地球全体を平均で五度ぐらい暖かくするだろうと思う。」「先生、あれを今すぐ噴かせられないでしょうか。」「そ・・・ 宮沢賢治 「グスコーブドリの伝記」
・・・その細かな火山灰が正しく上層の気流に混じて地球を包囲しているな。けれどもそれだからと云って我輩のこの追跡には害にならない。もうこの足あとの終るところにあの途方もない爬虫の骨がころがってるんだ。我輩はその地点を記録する。もう一足だぞ。」大・・・ 宮沢賢治 「楢ノ木大学士の野宿」
・・・そして、その動きは、二枚の種板が一つの暗箱の中でずって動くように、上層官吏と下級官吏との間で、いくらかずつ異った利害をもっているのだろうとも、推察される。しかし、概括して、民主的方向へ、といわれている。民主的というのは、どういうことだろう。・・・ 宮本百合子 「石を投ぐるもの」
・・・モーロアはアメリカの上層の貴族趣味に向って巧に自分のフランス人としての上流的身辺を仄めかしながら、所謂時の人々とその人々との会話の断片を捉えて、何か具体的めいた、重大な国家の事情や裏面に精通した人のように身振りして語っているのだが、よく読ん・・・ 宮本百合子 「今日の作家と読者」
・・・既往の世界で、文化というものは上層社会でしか花咲かないものときめられていた。 一七年から国内戦時代に出現した新しいソヴェト作家たちの才能は、やはりもとの社会からひきついでの、偶然性と自然発生によるものであった。十月がツァーの重圧をとりの・・・ 宮本百合子 「政治と作家の現実」
・・・荒涼たる心持で周囲を眺め、大人の文学をつくり、その大人の文学によって現実社会で官吏、実業家、軍人等によって占められている支配的上層部に伍そうとしたとして、それは容易なことであるだろうか。 フランスではユーゴーが宰相であり、ドイツではゲー・・・ 宮本百合子 「文学における今日の日本的なるもの」
・・・けれども、藤原氏以後、上層の支配者の文化は、すっかり一般人民の内面生活から遊離して、文学的な集というようなものには、庶民の婦人の生活の苦しさやひそかな歓喜の思いを反映する歌も物語も残していない。そのことは、支配者の文化がどんなに崩れやすい社・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
出典:青空文庫