・・・そして、多くの上級の軍人が描かれている。黄海の海戦の描写もある。しかし、出てくる軍人も戦争の状景も、通俗小説のそれで、ひどく真実味に乏しい。それに、この一篇の主題は戦争ではなく浪子の悲劇にある。だから、ここで戦争文学として取扱うことは至当で・・・ 黒島伝治 「明治の戦争文学」
・・・個人の事情を捨てろって、こないだも、上級の生徒に言われたよ。でも、そんな事を言う生徒は、たいてい頭の悪い、不勉強な奴にきまっているんだ。だから、なんだか、へんな気持になっちゃうんだよ。迂遠な学問なんかを、している時じゃ無い。肉体を、ぶっつけ・・・ 太宰治 「乞食学生」
・・・これがため習字を課せられているうちは、平均点数の上から成績のほうへも影響したが、上級に進んで、習字を省かれるとともに、成績も確かによくなった。そのほか別にきらいのものもなかった代わり、また格別得手というものもなかったが、その中で地理だけは中・・・ 寺田寅彦 「わが中学時代の勉強法」
・・・どうした拍子か僕が正岡の気にいったとみえて、打ちとけて交わるようになった。上級では川上眉山、石橋思案、尾崎紅葉などがいた。紅葉はあまり学校のほうはできのよくない男で、交際も自分とはしなかった。それからしばらくすると紅葉の小説が名高くなりだし・・・ 夏目漱石 「僕の昔」
ある人いわく、慶応義塾の学則を一見し、その学風を伝聞しても、初学の輩はもっぱら物理学を教うるとのこと、我が輩のもっとも賛誉するところなれども、学生の年ようやく長じて、その上級に達する者へは、哲学・法学の大意、または政治・経・・・ 福沢諭吉 「経世の学、また講究すべし」
・・・ みなさまはこの数日来、卒業し、送別会、上級学校の新入生としての歓迎会と、若々しい人生の一つの門から他の門へとおくぐりになりました。その間に、いろいろのことをお感じになっていることと思います。そのさまざまな感じのなかで、きょうに生き・・・ 宮本百合子 「新しい卒業生の皆さんへ」
・・・高輪の小学校でそれは必要ないことであったかもしれないが、日本の小学校と給食児童のこと、並に上級学校への入学試験準備居のこりの姿とは切っても切りはなせない。この映画が、現代小学校生活にふくまれている諸問題を真面目に率直に披瀝して識者の関心に訴・・・ 宮本百合子 「映画の語る現実」
去年の八月からきょうまで、十四ヵ月ほどの間、日本じゅう幾百万の国民学校の上級児童は、日本の歴史教科書というものを失っていた。 小学校令が行われ、国定教科書で教えるという方法がきまったのは明治何年であったか知らない。けれ・・・ 宮本百合子 「『くにのあゆみ』について」
・・・実業学校の卒業生は上級学校へ入れないことになったという事実には、それらの少年たちへのむごさがあると思う。 今日の世界の歴史が切迫し激動しているということから割り出されて来る社会的な必要と云われるもので目前説明されても、やはり世人のうけた・・・ 宮本百合子 「今日の耳目」
・・・けれども、第二次世界大戦において日本の軍事権力と上級軍人の或るものが演じた役割は、生命の破壊よりも遙かに悪逆な、生きながらその人々の人間性を殺戮することを敢てした。飛び立つ飛行機を見送ったときの兵士たちの敏感なこころの中では、音を立てて、何・・・ 宮本百合子 「逆立ちの公・私」
出典:青空文庫