・・・そうしてその一転ごとにだんだんにそうして不可避的に最後のクライマックスに近づいて行くのである。 太鼓の描くこの主題の伴奏としてはラッパのほかに兵隊の靴音がある。これがある時は石畳みの街路の上に、ある時は岩山の険路の上にまたある時は砂漠の・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」
・・・また筆者の愚痴な感想の中にも不可避的にその時代の流行思想のにおいがただよっていなければならない。そういうわけであるから現代の読者にはあまりに平凡な尋常茶飯事でも、半世紀後の好事家には意外な掘り出し物の種を蔵しているかもしれない。明治時代の「・・・ 寺田寅彦 「自由画稿」
・・・ 片岡氏は、当時のブルジョア道徳が逆宣伝的に、階級闘争に従う前衛のはなはだしく困難な生活の中に、不可避的に起ったさまざまの恋愛錯雑を嘲笑したのに対し、抗議としてこの小説を書かれた。そのことは、同じ小説の中の文句でもはっきり宣言せられてい・・・ 宮本百合子 「新しい一夫一婦」
・・・それがより若い文壇の世代の足を埋めているばかりか、不可避的にそれらの文学の読者であるよりひろい人民層の中から新しく別個の社会的素質をもってのび立って来ようとしている民主的な文学の芽生えさえも、その成長を歪め、畸型にする作用を及ぼしている。い・・・ 宮本百合子 「現代文学の広場」
若い息子 は、革命は不可避であるという自由主義的インテリゲンツィアの認識を基本としているものである。 「若い息子」について。○ボグダーノフのみが彼の主観的観念論によって、過去の遺産をプロレタリア文化建設・・・ 宮本百合子 「「若い息子」について」
・・・日本にとって戦争は不可避的なもののようにあらわされていて、人々の眼はもうそわそわと、「朝鮮景気」「物価騰貴」「どの株を買えば安全か」「買いだめ、疎開は必要か」「七万五千人の警察予備隊」と矢つぎ早の電光ニュースに奪われてしまっているところがあ・・・ 宮本百合子 「私の信条」
出典:青空文庫