・・・親の権威よりはるかに強く猛々しい社会不合理に面しているのである。 その国の民主主義が社会主義の段階まで到達しているところ、そして、非条理なナチズムの専制に献身して闘ってそれを撃破しえたソヴェト同盟の文化が、シェクスピアをとりあげる場合、・・・ 宮本百合子 「現代の主題」
・・・今の場合、自分は、認定で送れるのだと云われても、ただ常識で、そんな不合理なことがあるか! と撥ねかえすばかりなのであった。「大体、文化団体の連中は、ものがわかるようで分らないね。佐野学なんかは流石にしっかりしたもんだ。もっともっと大勢の・・・ 宮本百合子 「刻々」
・・・幼な児の如く信じた国民がその結果としておかれた今日の生活の破綻の中からめざめて、不合理な生産と、経済の事情を民主的に改善しようとしはじめたのは当然であります。日夜辛苦して家政をみている婦人が共にめざめたのも当然です。めざめた人民の命を削りな・・・ 宮本百合子 「今度の選挙と婦人」
・・・それは出来ません mは疑をはさまず首を振って いいえそれは出来ませんと云ったが、自分は此点は不合理だと思う。 СССРの勤人が休暇をもらって休養所へやって貰える制度は非常によい。 然し欠点がある。 クリミヤ モスク間は少くと・・・ 宮本百合子 「一九二九年一月――二月」
・・・大人の常識が不合理ときめる理由や感情が、子供にとって充分の理由であり、真実であり、而も大人を納得させるだけの語彙を欠いているばかりに、私共、総ての子供はどんなに苦しい思いをして来たことだ! 二三日その少女のことが忘られなかった。次に、夜・・・ 宮本百合子 「粗末な花束」
・・・その心の動因は、人間精神の成長とその合理への方向への信頼であり、他の面からそのことを云えば、不合理なものへの承服しがたさへの確信と、その承服しがたき事象の裡から、僅かなりともより承服しやすき方向への推進の力づくし、心づくしと云うことが出来る・・・ 宮本百合子 「地の塩文学の塩」
・・・ こんな、不合理なことを、彼女自身は何の矛盾も感ぜずに体ごと、その涙の中に沈潜して行くことが出来たのである。 実に屡々、これと大差ない奇怪な感情の陶酔に貫かれながら、どこにも統一のない彼女の生活は、だんだん彼女の年と、境遇とに比べて・・・ 宮本百合子 「地は饒なり」
・・・アグネスは、自分が生きて来た経験から、自分の体の皮膚の色で、白人の社会にもある不合理、非人間性を知りつくしている。同じ白い皮をもっているからと云って、アグネスは飢餓から救われたことはなかった。若い弟が自由労働者として働いている間に、溝の中で・・・ 宮本百合子 「中国に於ける二人のアメリカ婦人」
・・・ 初期のいくつかの短篇は、この社会で勤労階級の男や女が闘って行かねばならない、不合理な資本主義社会に対する人道主義的な憤りを示したものである。 一九二八年に、北海道における三・一五事件で、革命的労働者が大検挙され、野蛮なテロによって・・・ 宮本百合子 「同志小林多喜二の業績」
戦争中私たちは随分ひどい生活をしました。そして八月十五日が来た時、日本のすべての人々、とくに婦人たちの目には実に感慨深いなみだがうかんだと思います。これで惨虐なそして不合理な権力の抑圧は終ったと。戦争後私たちの生活は案外に・・・ 宮本百合子 「本当の愛嬌ということ」
出典:青空文庫