・・・ 僕は河童も蛙のように水陸両棲の動物だったことに今さらのように気がつきました。「しかしこの辺には川はないがね。」「いえ、こちらへ上がったのは水道の鉄管を抜けてきたのです。それからちょっと消火栓をあけて……」「消火栓をあけて?・・・ 芥川竜之介 「河童」
・・・それから水族館へ行って両棲動物を見た。ラインゴルドで午食をして、ヨスチイで珈琲を飲んで、なんにするという思案もなく、赤い薔薇のブケエを買って、その外にも鹿の角を二組、コブレンツの名所絵のある画葉書を百枚買った。そのあとでエルトハイムに寄って・・・ 著:ディモフオシップ 訳:森鴎外 「襟」
・・・私は明治維新のちょうど前の年に生れた人間でありますから、今日この聴衆諸君の中に御見えになる若い方とは違って、どっちかというと中途半端の教育を受けた海陸両棲動物のような怪しげなものでありますが、私らのような年輩の過去に比べると、今の若い人はよ・・・ 夏目漱石 「文芸と道徳」
出典:青空文庫