・・・そして対象は単一的であって並列的ではない。美的狩猟はならべ描くことによって情緒をますのだ。 結婚前の青年、特に学窓にある青年にとって、恋愛とはまず精神的思慕であり、生命的憧憬でなければならぬ。美しい娘の中に自分の衷なる精神の花を皆投げこ・・・ 倉田百三 「学生と生活」
・・・ 黒白の切片の配置、線の並列交錯に現われる節奏や諧調にどれだけの美的要素を含んでいるかという事になると、問題がよほど抽象的なものになり、むしろ帰納的な色彩を帯びては来るが、しかしそれだけにいくらか問題の根本へ近づいて行きそうに思われる。・・・ 寺田寅彦 「浮世絵の曲線」
・・・また多数の共鳴体を並列して地震動を分析する装置を考案し実際の地震の観測に使用してかなり面白い結果を得た。また構造物の模型実験が従来はいわゆる力学的相似にかまわず行われているのに飽き足らず、この点について合理的な模型を作る方法を考案し、その一・・・ 寺田寅彦 「工学博士末広恭二君」
・・・そういう事を頭においてだんだんに上記のいろいろの弦楽器の名前をローマ字書きに直して平面的あるいは立体的に並列させてみるとこれらはほとんど連続的な一つの系列を作る。これはたぶん偶然であるかもしれない。しかし万一そうでないかもしれない。かりに偶・・・ 寺田寅彦 「日本楽器の名称」
・・・さて試みにその一つを取ってこれを前句に並列してよくよくながめてみる、するとそれは多くの場合にたいていはあまりに付き過ぎたものになっていることを発見するのが常である。これはむしろ当然なことである。私はただわずかに前句の壁の扉を一つくぐったすぐ・・・ 寺田寅彦 「連句雑俎」
・・・とを今日盛んに唱えている作家たちは、その二つの問題をそれぞれ切りはなしていったり、または一時にこの二つの問題をただ並列的にあのこと、このことという風にだけもち出して語っているのである。 今新しい声で「大人の文学」といわれているけれども、・・・ 宮本百合子 「「大人の文学」論の現実性」
・・・そのために、全篇を通じて章から章へと並列的にとび、読者の心に期待される急所をはずしたまま通りすぎているような印象を与えられるのである。 作者が二十章のところで、木村の一つの経験として僅か数行で説明しているA村の地主二人が二大政党に分・・・ 宮本百合子 「作家への課題」
・・・然し、人間社会の歴史的展望に立って見わたした場合、きょうの日本的現実に反応する積極性の一表現として支持されるヒューマニズムとプロレタリア・リアリズムとの関係は、ただ単に、並列的に出発点がちがうといわれるだけでは、かんじんの何かが欠けていると・・・ 宮本百合子 「十月の文芸時評」
・・・従って、金銭をめぐっての、あのことこのこと、その諸関係が、並列的に現象の平等性をもってバルザックの作家的認識の世界に評価を求めて蝟集して来たのは実に自然な成行であったろうと推察される。バルザックは社会的現実を再現し、而もそれを金銭、利害の根・・・ 宮本百合子 「バルザックに対する評価」
・・・と亀井は書いているが、労働者農民の権力樹立への闘争と民主主義獲得のための闘争とは二元的に並列するものでは絶対にない。日本におけるプロレタリア革命への現実的条件として民主主義革命はプロレタリア革命の有機的前駆をなすものであり、花とその苞の如き・・・ 宮本百合子 「文学に関する感想」
出典:青空文庫